2006年8月、ミサイル発射の騒動によって、準戦時態勢を宣言した北朝鮮政権は緊急に志願兵を募集した。写真は、新兵送別イベントに動員された清津市の住民たち。(撮影 リ・ジュン)

2006年8月、ミサイル発射の騒動によって、準戦時態勢を宣言した北朝鮮政権は緊急に志願兵を募集した。写真は、新兵送別イベントに動員された清津市の住民たち。(撮影 リ・ジュン)

「飢餓世代」が入隊年齢に 部隊編成に支障出て社会人徴兵進める

中学新卒者数の減少で新兵補充に困難をきたしている金正恩政権が、社会人に対する軍入隊を強引に推し進めていることが分かった。しかし賄賂を使うなどして 軍服務を忌避する風潮が社会に蔓延しており、リクルートははかどらず現場部隊の構成に支障が出る事態も発生しているようだ。 (文・整理 ペク・チャン リョン)

◆ 「妻がいるので軍に行けない」と面接で述べたら犯罪者扱い

7月8日に咸鏡北道に住むアジアプレスの取材協力者が伝えてきたところによると、現在、 学校を卒業してすでに社会に出ている者に対する徴兵事業(北朝鮮では「社会招募生」という)が進められているが、対象となった若者たちが軍入隊を嫌い、賄 賂を使って軍入隊を逃れようとする事例が頻発、それに対して当局は地区の労働党委員会に報告して処罰するなど問題が深刻になっているという。

「◇◇郡に住むある24歳の青年に軍務への召集がかかったが、軍動員部長(徴兵事業担当の軍幹部)との面接で、なんと彼は『私には妻がいるため軍隊 には行かない』と述べたんだが、それが◇◇郡の党委員会まで報告され、青年の親まで毎日のように党委員会に呼び出される大きな問題になった。彼の家族も無 事では済まないだろう。この青年は、毎年賄賂を払い続けて徴兵を逃れてきたのだが、今年はそれが通用しないのだ」
取材協力者は電話でこのように述べた。

北朝鮮の軍隊は「義務兵役制」と呼ばれる事実上の徴兵制だ。2003年3月、最高人民会議で「全軍事服務制」を法令化し、満17歳になると身体検査 不合格者を除くすべての男子は、入隊しなければならない。刑法83条(2004年改訂版)には「軍事服務動員を忌避した者は2年以下の労働鍛錬刑に処す る」と記されている。徴兵忌避は犯罪として扱われるわけだ。

北朝鮮の徴兵手続きを見てみよう。すべての国民は14歳になると地域の軍機関に自動登録され、17歳で入隊するまで毎年身体検査を受ける。中学校卒 業するにあたって身体検査合格者には、各地の行政機関にある軍事動員部から「入隊通知書」を受けて各地の部隊に配属されることになる。これらの手続きを北 朝鮮では徴兵と呼ばず「招募」と称している。青年が自発的に募集に応じて軍に志願したという建前があるからだ。

※北朝鮮の中学生は14歳になると少年団から青年同盟という政治組織に義務加入することになり、同時に「赤い青年近衛隊」という民間軍事組織に入る。その時から中学校を卒業するまで毎年軍事訓練に参加、実弾射撃訓練を行う。
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