東京電力は2013年末、福島第一原発の屋外にある主排気筒の下部、配管部分の放射線量が、毎時約25シーベルトにものぼると発表した。これは、屋外の放 射線量としては異常に高い数値だが、こうした状況の中でも福島第一原発構内では多くの作業員が働いている。この問題について、京都大学原子炉実験所・助教 の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R): この25ミリシーベルトという値はどのような値ですか。

小出:人間という生き物は放射線に被曝すると様々な障害が出てきます。毎時2シーベルトを被曝すると死ぬ人が出 てきます。そして、4シーベルトを被曝すると2人に1人は死んでしまいます。8シーベルトを被ばくすると、全ての人が死んでしまうという、そのくらいの被 曝量なのです。1時間当たり25シーベルトということですから、仮に20分間、人がそこにいれば確実に死んでしまう、そのくらいの量ですね。猛烈な放射線 量ですし、これから作業をするに当たって、労働者の被曝ということが大変心配です。

R:なぜこんなに高い放射線量が計測されたのでしょうか。

小出:東京電力によれば、この高い放射線が計測された場所というのは、非常用ガス処理系というところの排管なのだそうです。

では、そこで何が起き、今何があるのか。2011年3月11日に事故が起きて以降、原子炉で炉心が熔けたことで、格納容器という放射能を閉じ込める 最後の防護壁の中の圧力がどんどん上がってきてしまい、格納容器が破裂してしまうという危機がありました。その時に、格納容器内の圧力を減らさなければな らなくなり、格納容器の中の放射性のガスを全部環境に抜く、ベントという作業をしたことがあったのです。それで弁を開いた時に、この非常用ガス処理系の排 管の中にも、ベントをした放射性物質を含んだガスが流れてきて、恐らく固体のものなどがその場所に溜まってしまったのだろうと私は思います。

R:東京電力はこれにどうやって対処すると考えますか。

小出:いずれにしても除去しなければいけません。ただし、猛烈な放射線量ですから近づくことすら難しいと思います。私たち原子力に携わる者がいわゆる被曝を避けるという時に大切な原則が3つあるのですが、それは「時間」「距離」「遮蔽」です。
つまり、なるべく短時間で作業をしなさい。なるべく離れたところから作業ができるように考えなさい。そして、放射線が飛んでくる場所から人々が作業をする場所までの間にいわゆる鉛の壁などを作って被曝を減らしなさい。という3つの原則があるのです。

このままでは、1時間当たり25シーベルトという線量のあるところで人間は作業できません。まずは遠隔操作ができるような機器を開発するとか、遮蔽体を準備するなどして、その上でできる限り短時間に作業を終えられるような計画を立てて、実行するしかないと思います。
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