(資料写真)長白県のある商店に公安によって掲げられた標語。「麻薬を拒否し麻薬取締に関わろう」とある。2014年5月撮影(アジアプレス)

(資料写真)長白県のある商店に公安によって掲げられた標語。「麻薬を拒否し麻薬取締に関わろう」とある。2014年5月撮影(アジアプレス)

 

◇「住民の40%が経験、1グラム約2000円で売買」との証言も

北朝鮮で覚醒剤の蔓延が止まらない。
警察官や保衛部(情報機関)要員までが吸引したり売買に関わったりしており、統制できない状況になりつつある。また最近では中学生の間にも汚染が拡がって いるという。北朝鮮内部での取材で分かった。調査にあたった北部・咸鏡北道に住む取材協力者がアジアプレスと交わした通話を再構成する。(ペク・チャン リョン)

記者:最近、北朝鮮国内での「オルム」(氷の意、覚せい剤のこと)使用の実態、売買はどうですか?
取材協力者(以下、協力者):売買は活発どころではありません。値段が上がってます。昨年まで1グラムあたり中国人民元100元(約 1700円)だった値段が、今年に入ってからは0.8グラムにつき100元に上がりました。1~2回分に小分けに包装されたものは、朝鮮の金で3万ウォン (約400円)で売られていますね。

「オルム」とは朝鮮語で「氷」。日本では「シャブ」や「ヒロポン」という名で知られる「メタンフェタミン」という化学合成麻薬を指す隠語だ。北朝鮮で広まる覚醒剤は全てが国内産であるのが特徴で原価はとても安い。覚醒剤の値上がりの背景には需要の増加がある。

◇農村の学生や主婦、老人までもが吸引 都市部ではさらに多いとも
では「オルム」は北朝鮮社会でどの程度、広がりを見せているのか。協力者の口をついて出たのは衝撃的な証言だった。

記者:あなたの住んでいる地域で、「オルム」を使う住民はどれくらいの割合だと思いますか?
協力者:ここは農村ですが使用者が多いです。私は最近引っ越してきたのですが、こんな農村にまで「オルム」が広 がっているのかと驚き、やり切れない気持ちです。使用者数は正確には分かりませんが人口の四割くらいは「オルム」に接したことがあるんではないでしょう か。私が昨年まで住んでいた中国との国境沿いの都市では、八割に吸引経験があるといっても過言ではないですよ。

記者:どんな人が「オルム」を使うのですか?
協力者:とても幅広い人がやっているのは確かです。余生がいくらもないような老人から、高等中学3年、4年生(14、5歳)までがやっています。既婚女性の場合も、お金を貯めることに熱心な人以外はほとんどが経験しているのでは。

7月末の時点で、中国人民元100元の実勢レートは12万朝鮮ウォン。同じ時期、北朝鮮国内では米1キロの価格が約6000ウォンであることから、 「オルム」1グラムは米20キロ以上の価値である。日本の覚醒剤の闇価格と比べると数十分の一だが、北朝鮮では非常に高価である。
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