日本は戦争の反省の下、日本国憲法をつくった。一人ひとりは平等であるはずなのに、本来、放射線管理区域にしなければならないような土地に今も住まなくて はいけない人たちがいる。そうした矛盾を直視することなく、東京五輪の話題に沸く日本の現状に、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんが警鐘を鳴ら ず。
ラジオフォーラム

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◆今何をなしたか、未来の子供たちから問われる日がくる

事故を起こした福島第一原子力発電所では2011年3月11日、1号機、2号機、3号機の3つは運転中でした。そして、地震と津波に襲われて、炉心 と呼ばれる部分が熔けてしまい、その過程で水素という爆発性のガスが発生するという物理化学的な理由があって、水素が爆発し、建屋が吹き飛んでしまうとい うことになりました。

事故を起こしたのが火力発電所なら、すぐにでも現場に行って調べることができるのですけれども、こと原子力発電所の場合には、4年経っても原子炉に 行けないという、そういう過酷な事故が今でも続いているわけです。人が行けば即死です。そのためロボットを行かせようとしていますが、ロボットも放射線に 弱いのです。そのため送り込んだロボットはみんな討ち死して帰って来られないという状態になってしまっていて、原子炉内部がどうなってるか全く分かりませ ん。

そのためどうしてるかと言うと、これ以上炉心を熔かしたらいけないということで、ただただ水を送るということをやってきたわけです。しかしそれを やってしまえば、送った水が放射能で汚れた放射能汚染水になるのは当たり前のことなのであって、どんどん放射能汚染水が増えてきてしまうということに、今 なっているわけです。

それが環境に漏れていってるわけですけれども、それを防ごうとして、今現在も何千人というような労働者が現場で働いています。ただしその労働者は、 東京電力の社員ではありません。東京電力の下請け、そのまた下請け、その下請け、孫請けというように、8次9次10次というような下請け関係で働いてい る、本当に底辺の労働者たちです。下請けに行くたびに企業がピンはねをして、労働者の手に賃金が渡る時には最低賃金にも満たないというような額になりま す。

今現在、労働者の数は7000人と言われていますが、これから本当に日本という国で、そういう労働者をいつまで確保できるのだろうかと、私はずっと 不安に思っています。すでにたくさんの外国人労働者が駆り集められてきて、福島の発電所の敷地の中では言葉すら通じないという、そういう状況で働いている 労働者たちが今いるわけです。
何とか放射能の放出を少しでも減らさなければいけませんけれども、でもすでに大量の放射性物質が放出されてしまっています。そのため、たくさんの人たちが今現在も被曝をするしかないという状態になってしまっているわけです。

2011年3月11日に事故が起きて、原子力緊急事態宣言というのが出されました。それを根拠に日本政府は、本来なら放射線管理区域にしなければい けないような高線量の場所に、子どもも含めて捨ててしまっています。今現在、被曝が続いているんです。でも、先程お話した通り、原子力マフィアはそれを忘 れさせようと画策しているわけです。彼らがやろうとしていることは、別のことに目を向けさせて、それを忘れさせようとすることです。

今は、もう日本国中がオリンピックに向けてどんどん引きずり込まれようとしています。オリンピックに反対すると、今度はまた非国民であるかのように言われてしまうという、そんな時代に向かっているんだと思います。
でも今なすべきことは、本当であれば、福島第一原子力発電所の被害者たちをきちっと救済しなければいけないし、原子力発電所の事故を収束させなければいけないということだと思うし、オリンピックなんかに浮かれている時ではないと私は思います。

福島第一原子力発電所の事故が起きた今、原子力に対してどう向き合うかということを私たちはきっちりと考えなければいけません。騙されたんだという 言い訳だけは、やはり私は通じないだろうと思います。きっと、私達は未来の子ども達から、福島の事故が起きた後、どうやって生きたんだと問われるだろうと 思いますので、それに応えるように生きたいと私は思っています。