福島第一原子力発電所では、核燃料から出る崩壊熱を冷やすため、ひたすら注水を続けてきた。敷地内に流れ込んでくる地下水と合わせると、1日に400トン もの放射能汚染水が生じており、その処理は限界に達している。核燃料を冷却するには、注水以外に方法はないのか。元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章 さんに聞いた。(ラジオフォーラム

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):小出さんは「水ではなくて、すずとか鉛と言った融点の低い金属で冷やすことも可能だ」というふうにおっしゃっていますが、それは可能なのですか。

小出:4年以上経った現在では崩壊熱が減っているので、冷やすためには必ずしも水でなくてもいいだろうと思うよ うになりました。そのために水に代わる材料として、比較的低い温度で熔けてくれる金属である、すずとか鉛というようなものを送ることができるのであれば、 それが液体状態になって炉心を冷やしてくれるのではないかと期待しています。

R:それはどの程度可能性があることなのでしょうか。

小出:本当にそれができるのかどうかということは私もよく分からないのです。でも、このままではやはり放射能汚染水問題がますます深刻になって手の打ちようがなくなります。いつの時点からか、やはり決断してやってみるべきだと私は思います。

R:金属だけではなくて、場合によっては空冷、つまり空気でも冷やせるのだという発言もされていますね。

小出:はい。自動車は液体を使っていますよね、つまり大抵はエンジンをラジエーターで冷やしているわけです。でも、バイクは空冷なのですね。ですから、発熱の大きさによっては、水あるいは液体でなく、空冷ということも可能かもしれないと思います。

格納容器という巨大な容器の中に、熔けた炉心が恐らくどこかにあるはずです。あるいは、一部は格納容器の底を突き破って外に出ているかもしれません が、格納容器という巨大な容器はかなり表面積が大きいので、その表面をブロアー(送風機)で冷やすことで冷却ができる可能性はかなり高いと私は思います。

R:「石棺で封じ込めるしかない」というような発言を小出さんはされていますね。

小出:そうです。

R:石棺と言うと、チェルノブイリを思い出すのですけれども、福島第一原発もコンクリートで埋め固めて大丈夫なのでしょうか。

小出:さまざまな問題があると思います。例えば、チェルノブイリ原子力発電所の事故の場合には、熔け落ちた炉心 が地下に流れていったのですが、当時のソ連政府は地下に液体窒素などを流す、あるいはコンクリートのスラブ(床)を造るなどして、熔け落ちた炉心が地中に 流れ出ていってしまうということは防いだのです。そして、原子炉建屋が地震によって破壊され、地下水が建屋の中に流れ込んでくるという現在の福島第一原子 力発電所のようなこともありませんでした。
とにかく壊れてしまった原子炉建屋、その地上の部分をさらに大きなコンクリート構造物で覆えばいいということで、ようやくにして石棺というものを造ったの です。ただ、その石棺も事故からすでに29年経ってボロボロになってしまいまして、その石棺をさらに大きな第2石棺で覆わなければいけないという状態に なってしまっています。