発電所で作られるエネルギーは、そのすべてが電力として有効に使われるわけではない。とりわけ原子力発電所では、ウランから得たエネルギーの大部分は行き場がなく、海洋へと放たれる。このことについて、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆原発は温水の巨大な河口

ラジオフォーラム(以下R):小出さんが書かれた本の中に「原発は海あたため装置」という記述がありましたが、これはどういうことでしょうか。

小出:原子力発電所や火力発電所を、いわゆる蒸気機関と私たちは呼んでいます。例えば原子力発電の場合、ウランの核分裂のエネルギーで水を沸騰さ せ、その蒸気でエネルギーを発生させるわけですが、その作ったエネルギーのうち、電気に変換される部分はわずか3分の1しかありません。

R:3分の1だけですか。

小出:はい。残りの3分の2の熱は、どうにも使いようがなくて捨てるしかないのです。どうやって捨てるかと言うと、海水を敷地の中に引き込んでその 海水を温めてまた海に戻すという方法をとっています。発生した熱のうちの3分の2は海を温めるために使っているという機械です。発電所というよりは、むし ろ海あたため装置と呼ぶべきだと、私が数少ない恩師と呼ぶ水戸巌さんという人が、私が学生の頃に教えてくれました。

R:新潟県にある柏崎刈羽原発の地元の方が「原発の周りにイルカが出る」と言っていたのを聞いたことがあります。もしかすると、原発が温めた海水のせいでイルカが来たという可能性もありますか。

小出:もちろんあります。今日では100万キロワットという原子力発電所が標準になっているのですが、その原子力発電所では海水を引き込み、その温度を7度も上げて海へ戻します。その流量が1秒間に70トン。

R:7度も上がった水が1秒に70トンも流れてくるのですか。

小出:はい。日本には、1秒間の流量が70トンを超えるような大きな川は、30もありません。それぐらい巨大な温かい川がそこにできてしまいます。 そのため、全く違う生態系になってしまい、それまでそこにいた生き物は生きられなくなり、今度は温かい海が好きという生き物がそこに集まってくるというこ とになるのです。

R:福島第一原発の漁協を取材した時に、漁師さんが「原発が動いていた時は、巨大なスズキが捕れた」と言っていました。これもその影響と考えることができますか。

小出:私は魚類学者じゃありませんのでよくわかりませんが、そのような可能性も含めて、やはりきちんと調べるというのが科学的な態度だと思います。