1985年に撮影された金日成(左)と金正日の現地視察の様子。(「わが民族同士」より引用)

1985年に撮影された金日成(左)と金正日の現地視察の様子。(「わが民族同士」より引用)

北朝鮮では、最高指導者の前では「最大の尊敬心を持ち丁重な態度をとること」が要求され、地位に関係なくそのように振る舞うのが常識である。場の全員が、立てば直立不動、座れば姿勢を正して正面を見据える。
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ところが映像の中の張成沢は、まるで金正恩の存在を無視するかのような態度だ。この映像をインターネットで見た時、あんな「不純な」振る舞いをした張成沢は大変な攻撃を受けるはずだと感じた。おそらくテレビを見た北朝鮮中の人間が、私と同様の衝撃を受けたはずである。

北朝鮮のメディアでは、発表前に数度にわたり厳重な検閲が入る。党や最高指導者の権威と領導にマイナスとなる記事や写真がないかを細かく見るのだが、張成沢の突出ぶりが問題にもならずに公に露出したことは、自信に溢れる張成沢の姿があえて際立つよう、張成沢本人とその側近たちが、権力を誇示する目的で官営メディアに強い影響力を行使していたと見るのが妥当だろう。

1の写真が公開された時に脱北者の知人が発した言葉が耳に残る。
「金正恩の隣であんなポーズをとるなんて、張成沢の力はそれほど強いのか? このままでは、張成沢の肖像画が壁に掛けられることになるんじゃないか?」

また、同じくリムジンガン編集部の脱北者スタッフのカン・チウォンは、1の写真について「左側の張成沢の位置は、もともと金日成のポジションだ。この写真を見た時、北朝鮮は張成沢の時代だと確信した」と述べていた。
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