8月17日に開催された「石綿ばく露者の健康管理に関する検討会」で環境省が公表した新たなアスベスト検診案に対し、自治体や被害者団体から疑問や批判が相次いでいる。(井部正之撮影)

 

環境省が2018年度以降に導入を検討している新たなアスベスト健康調査に対し、疑問や批判の声が上がっている。(井部正之)

◆国が新検診案を公表

現在のアスベスト健康調査は、アスベストを吸ってしまった可能性のある人びとに対し、問診や胸部レントゲン検査、胸部コンピュータ断層撮影(CT)検査などの「アスベスト検診」を無料で提供し、健康管理や不安解消に努めるというもの。

アスベスト検診が始まったのは2005年6月末、兵庫県尼崎市の機械メーカー・クボタの旧神崎工場周辺で住民にアスベストが原因とみられる中皮腫被害が見つかったことがきっかけだ。

この検診はクボタ工場のあった尼崎市などから始まり、かつてアスベスト製品の工場があった自治体を中心に拡がってきた。現在同省が自治体に委託する形で8府県24地域において検診は実施されている。

ところが、実際にはアスベスト製品の工場は日本各地に存在していたため、同様の健康不安を持つ人びとは全国各地に存在する。しかも最近では吹き付けアスベストが使用された横浜市の公営住宅に20年以上住んでいたが中皮腫を発症するなど建物由来の被害も懸念されており、全国どこででも希望すれば受けることができるアスベスト検診の必要性は高い。

2016年12月環境省の中央環境審議会「石綿健康被害救済小委員会」は「地方自治体の協力を得て対象地域の拡大に努めながら継続」するよう報告書で求めており、同省はその方策を探ってきた。

そうしたなか同省がアスベスト検診を“全国化”すべく8月17日の「石綿ばく露者の健康管理に関する検討会」で示したのが、2018年度以降、既存の肺がん検診の一部に組み込むとの方針だ。
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