震災から2年後、甲斐さんは手先の器用さを生かし、掛け軸などを修復する表装技能士として再スタートを切った。

その後、2人を苦しめたのは震災障害者が忘れられているという現実だった。「障害が残っても生きているだけましでは」という言葉も追い打ちをかけた。

自然災害で障害を負った人に国が支給する「災害障害者見舞金」は、両目失明、もしくは両腕または両足の機能を失うなどの障害等級1級の場合に限られ、4級の甲斐さん、5級の岡田さんは対象外で、震災障害者には行政の相談窓口すらなかった。

「背負い続けてきた重たい荷物を一つずつはがしていきたい。そのためにも同じ悩みを持つ人が集まれる場が必要だ」という岡田さんの訴えを聞き、高校教師だった牧秀一さん(67)が07年、震災障害者を支援する神戸市のNPO法人「よろず相談室」を設立し、「震災障害者と家族の集い」を始めた。

牧さんらの訴えもあり、兵庫県と神戸市は10年度に震災障害者の実態調査に乗り出し、349人の存在を把握した。13年には県が相談窓口を設置し、復興支援専門員らが相談に応じている。

震災から23年、二人はいう。「いつ、どこで大きな災害が起きるかわかりません。震災による障害と向き合い、懸命に生きている人がいることを知っていただきたい」(了)