◆「出党処分」は政治的死亡宣告

朝鮮労働党はまた、「十大原則」改定に伴い、2013年夏に党員証の再交付を行った。従来の党員証は、表紙の裏に金日成の肖像画が単独で掲げられていたが、新しい党員証では金日成と金正日の2人の肖像画に変更された。

すべての朝鮮労働党員は、党員証を生命と同等に扱うことを求められている。常時携帯が義務付けられており、党員証が破れたり水に濡れたりして破損した場合、党への忠誠心を疑問視され、政治学習の場で他の党員らによる思想闘争(集中的な批判)の対象とされたり、数カ月間の「革命化」(労働による矯正)を課せられることもある。さらに、党員証を紛失した場合には、出党(党からの除名)処分につながる。

かつて、朝鮮労働党の党員であることは、北朝鮮において安定した生活を手に入れる上で極めて有利に働いた。しかし近年においては、経済の停滞や配給制度の崩壊によって、党の権威は失墜。党員であることもほとんどメリットにつながらず、むしろ行事参加などの負担が多い分、庶民の間では入党を敬遠する傾向さえ生まれている。

それでも、すでに党員となった人が出党処分を受けるのは、非常に危険なことだと言える。党員として不適格と見なされることはすなわち、体制に対して従順でない、あるいは反抗的であるとみなされ、不満分子・危険分子に色分けされてしまうからだ。

「十大原則」の改定にともなう党員証の再交付には、党員の思想を点検し、体制の引き締めを図る狙いがあったはずだ。そこでとくに重視されたのが、新たな「十大原則」の徹底的な浸透――すなわち、金正恩に対して忠誠を誓わせることだったのは間違いない。
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