日本のEEZに出現した北朝鮮の木造船。2018年8月中旬(海上保安庁提供)

北朝鮮のものと見られる木造漁船が、日本海沿岸に続々と漂流・漂着している。11月21日時点ですでに100隻を超えている。昨年は漂流・漂着船が100超、35の遺体が見つかった。今秋は、すでに昨年を上回るペースだ。報道された画像を見る限り、木造船はその形状から北朝鮮のイカ漁船に間違いないだろう(工作船では? などと珍説を流布する人がいるが)。

北朝鮮のイカ漁は6~11月が最盛期で日本と同じ。スルメや冷凍イカに加工され主に中国に輸出されてきた。海産物は北朝鮮の2016年の輸出額3位で、約200億円を稼いだ。イカはその主力産品だ。しかし、昨年、国連安全保障理事会が決めた経済制裁によって海産物は全面禁輸になった。

販路が断たれてイカ漁は低調になり、船の漂着も激減するだろう、そう、私は予測していた。ところが、早くも5月末に日本の排他的経済水域(EEZ)付近に姿を現した。水産庁によれば、日本のEEZで違法操業している北朝鮮漁船は、10月に急増してのべ5000隻に上るという。押し寄せていると言っていい。どうしたわけだろうか?

◆中国業者が制裁解除見越して大量購入して保管

北朝鮮に住む取材協力者に依頼してイカ漁の拠点の清津(チョンジン)、羅先(ラソン)に行ってもらい調べたところ、意外な事実が浮かび上がった。

まず、今年に入り市場のスルメ価格が暴落した。制裁で輸出できなくなったからだ。ところが、金正恩氏が二度目の中国訪問をした5月初旬以降、上物のスルメの価格が1キロ800円ほどに急回復した。制裁解除を見越した中国の業者が買い付けに走ったのだ。調査した協力者は次のように言う。

「輸出ができるようになるまで北朝鮮内の倉庫に保管するそうだ。また、鴨緑江の上流で密輸が急に活発になり、スルメが大量に中国に流れている」

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