開城工団の北朝鮮労働者。 2007年2月に撮影リ・シユ(アジアプレス)

2016年2月に朴槿恵(パク・クネ)政権の決定によって韓国企業が撤収した開城(ケソン)工業団地で、北朝鮮当局が現在も工場の無断稼働を続けて、生産した高級衣料品が国内の富裕層向けに販売されていることがアジアプレスの調査で分かった。同工団を無断稼働していることを隠すために、生産品から商標を外させるなど、当局は「開城隠し」を徹底させていた。(カン・ジウォン / 石丸次郎)

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「『開城製品』は中国製と比べて高いけれど質が良いと評判で、幹部や金持ちに向けて生産が続いて大量に販売されている。儲かっている貿易会社などでは、年末の贈り物用に商社に事前に注文している。価格は、例えば羽毛の冬用ジャンパ―1着が650中国元(約1万600円)する。同程度の中国製品は350元(約5700円)だ」
11月末、中部の平安南道に住む取材協力者はこのように伝えてきた。

◆わざわざ検問で「開城製品」のタグを検査

調査した取材協力者によれば、流通を担っているのは、「開城生産品」の正規の伝票を発行された会社や機関だけで、開城から平安南(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)市などに運ばれ、そこから全国に流通していく。その際、商標を必ず外さなければならず、出荷の際にハサミでタグを切らせているという。開城製品が高値で売れるため、模倣品を作る業者が数多く出現、本物に紛れ込ませて売っているという。

「平城から出る道路の検問所では、わざわざ『商標検閲』が行われ、荷物の中で一着でも開城に関連する商標タグが残っていると全量没収になる。11月中旬には、清津市に運ばれる途中の羽毛ジャケットに商標タグが残っていて、2000元の賄賂を現場で渡して何とか没収を免れたケースがあった」

協力者は「開城隠し」の実態をこのように述べた。だが、「開城製品」は高級品のブランドである。それなのに、なぜわざわざ商標を外させるのだろうか? 協力者は次のように理由を説明する。

「勝手に開城の工場を稼働させていることが韓国や外国にばれないよう、当局が神経を使っているのだ。証拠が出て韓国で問題になるのを心配している」

この取材協力者は商標タグを直接見ることが適わず、それが韓国、中国いずれのものなのかわからないとのことであった。製品の原材料の布地やジッパーなどは中国から輸入したものと、韓国企業が撤収した時に残していったものがあると見られる。