(参考写真)文大統領への期待は経済支援という声が北朝鮮庶民の圧倒的な声だ。写真は路上商売に精を出す女性。2013年10月両江道にて撮影アジアプレス

◆文大統領の人気高し

9月の平壌訪問を経て、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮国民の間で認知度は不動のものとなった。金正恩(キム・ジョンウン)氏との間で交わした南北和解と協力の事業についても、国営メディアが報じており、内容は広く知れわたっている。では、現時点で北朝鮮の人々の文大統領と韓国に対する評価はどうなのだろうか? 10-11月にかけて北朝鮮の住民に話を聞いた。(カン・ジウォン)
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北朝鮮の人々は、金正恩氏、文在寅大統領について、極めて限定的な情報しか与えられていない。金正恩氏に対しては、国民に絶え間なく礼賛報道、偉大性教養がなされ、批判的な言動には厳しい処罰があるという情報環境だ。

文大統領に対しては、金正恩氏とのツーショットの写真や映像が大きく報じられ、記事中でも「大統領」という呼称が用いられた。国営メディアは、賞賛こそしないが、文大統領批判をずっと自制している。

平安北道に住む取材協力者に、周囲の文大統領の評価はどうかと尋ねると、
「幹部たちも一般住民の間でも、文在寅氏の評判は高いですね。南朝鮮の歴代大統領の中で一番民族的良心のある人だ、祖国統一のために積極的にやってくれている、と肯定的に言います」
と答えた。

咸鏡北道(ハムギョンブクド)の取材協力者に、なぜ文大統領は北に対して融和的だと思うかと聞くと、「文在寅氏の故郷が北だからだろう」と答えた。文大統領自身は慶尚南道の巨済島の生まれだが、両親は朝鮮戦争時の咸鏡南道咸興(ハムン)市からの避難民である。

北朝鮮のメディアは文在寅氏を「大韓民国大統領」と公式に紹介した。このことについて、「一部の人たちからは、韓国を国として認めたということなのだろうか?」という反応があったという。

一方で、「人前では『文在寅いいね』なんて絶対に言えない。目つけられて死ぬことになりかねない」という声もあった。これは平壌から中国に10月末に出てきたビジネスマンの発言だ。

北朝鮮では指導者は唯一無二だという絶対原則=「唯一領導体系」がある。つまり朝鮮半島において金正恩氏以外の政治リーダーを賞賛することは「危険」な行為なのだ。

付言すると、国営メディアに出た文大統領の外貌に関しては、「老けて見えてお爺さんのようだった」「(金正恩氏との)年齢差があっておじいさんと孫のようだった」と述べた人が複数いた。

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