(参考写真) 路上で商売する若い女性(左)に市場税を払えと迫る市場管理員。2013年3月平安南道の平城市にて撮影アジアプレス

◆金品徴発に損害保険への加入強要

北朝鮮は国連安保理が決めた経済制裁によって、2016年に比べて貿易収入が約88%減少し、2700億円を失った。打撃は平壌の高位層、富裕層、軍隊にまで及んでおり、金正恩政権の統治資金も深刻な打撃を受けている。それを国民に転嫁するため、国民からの収奪政策を進めていることが分かった。(カン・ジウォン/石丸次郎)

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北朝鮮では、建設支援や、道路補修、学校整備、軍隊支援などの名目で、住民から頻繁に現金や物資を徴発してきたが、経済制裁の影響が深刻化した昨年から、負担が大きく増している。

「あれこれ合わせると毎月80~100中国元(約1280~1600円)は取られる」と、地方都市在住の商売人の女性は言う。これは平均的な庶民の1カ月の世帯収入の3~5割に当たる。決められた税金ではないのだが、住民たちは「税負担」と呼ぶ。

それだけではない。北朝鮮当局は、昨年12月、生活困難者以外のすべての世帯に、国が運営する損害保険への加入を強要し始めた。北部地域に住む取材協力者は、保険は「朝鮮民族保険総会社」が運営しているとして、次のよう述べた。

◆保険加入が指導者への忠誠だ

「人民班の会議では、愛国の気持ちで保険に加入せよと言われるが、保険の内容や保険金の支払いについては大した説明がない。国と指導者への忠誠度を測るという雰囲気なので、生活困難者を除いてほとんどの人加入したと思う。要するに、国にカネがないので捧げよというわけだ」
※人民班は行政の末端組織で、かつての日本の「隣組」と類似する。

ちなみに保険料は1カ月に2000ウォン(約23円)だという。この取材協力者によれば、人民班長が未加入の家庭を月に2度、3度訪ねてきて、まるで借金取りのように振る舞うため不満が強いという。

保険に加入すると、条件をまとめた「住宅家庭財産保険証券」を渡される。だが、実際に保障がもらえると考える人はいないそうだ。「これまで保険金が支払われた事例は聞いたことがないからだ」と、協力者は説明する。