中国公安当局が立てた密輸、麻薬売買禁止の看板。2017年7月に撮影石丸次郎

◆暴騰したガソリン価格が安定 その理由は?

国際社会から厳しい経済制裁を科されている北朝鮮。輸出だけでなく、ガソリンなどの石油製品の輸入も厳しく制限されている。2017年12月に国連安全保障理事会で満場一致で採択された制裁決議「2397号」は、石油製品を50万バレル以下しか北朝鮮に輸出してはならないと定めた。2016年に比べ90%近い削減。金正恩政権にとっては大きな打撃であった。
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北朝鮮国内のガソリン価格はすぐに上昇した。2018年に入ると、一時、1リットル当たり300円超に跳ね上がった。ところがそれから半年後、ガソリン価格は、徐々に下がり始めた。

今年4月後半は、1リットル当たり140円程度で安定推移している。中国やロシアから、制限量を超えるガソリンが搬入されているためだと思われる。

◆コメ袋に偽装してガソリン密輸

密輸も活発だった。「瀬取り」と呼ばれる海上での密輸の他、中国から陸路で運ばれていた実態が分かった。ガソリン密輸について調査してきた北朝鮮に住む取材協力者は、次のように報告してきた。

「北部の両江道(リャンガンド)では、ガソリンが入ったビニール容器をコメ袋で包装し、食糧を偽装して密輸してきた。ガソリンが中国から10トントラックで大量に運ばれて来るのを何度か目撃した」

この協力者によれば、北朝鮮側で偽装輸入しているのは個人ではなく、両江道貿易局が承認した複数の貿易会社だという。

「彼らは現金取引もするが、漢方薬材料の薬草を密輸し、その対価としてガソリンをコメに偽装して密輸入してきた」
と述べる。

ところが、この方式のガソリン密輸は、2019年2月末頃に中断してしまったという。中国が取り締まりを強化したためだ。吉林省に住む朝中貿易の仲介業者は、アジアプレスの取材に対し次のように述べた。

「コメ袋で包装してごまかして北朝鮮に送ってきたので、中国側の国境警備隊まで欺かれていた。しかし、状況は変わった。中国当局が輸出品の検査を厳格に行うようになったのに加えて、ガソリン密輸にも厳しい態度を取るようになり、3月初めにガソリン密輸業者が2人逮捕された。3月末には、ガソリン5トンをコメに偽装して北朝鮮に送ろうとした業者も摘発され、拘禁が続いている」
という。

また、4月に入ってから、ガソリンや軽油を専門的に密輸してきた吉林省の女性業者3人が逮捕され、刑務所に収監されたという報告も入って来ている。 (カン・ジウォン)

※5月6日付けの同タイトルの記事中で、北朝鮮側で密輸に従事する貿易会社について、「彼らは現金取引もするが、漢方薬材料の薬草を正規に輸出し、その代金としてガソリンをコメに偽装して入れてきた」と書きましたが、中国と北朝鮮現地に状況を確認したところ「漢方薬材料の薬草を密輸し、その対価としてガソリンをコメに偽装して密輸入してきた」の誤りでした。
薬草やコメの輸出入は制裁違反ではなく合法ですが、税関を通さず密輸されるケースも多いようで、その際、コメを偽装してガソリンも密輸されていた、というのが取材の趣旨でした。中国人の協力者によれば、国境警備隊が黙認することで密輸が盛行していましたが、ガソリンの密輸については取り締まりが厳しくなっているということです。
また、「今年4月後半は、1リットル当たり100円程度で安定推移している」とありましたが、「1リットル当たり140円程度」の誤りでした。
お詫びして訂正します。(2019年5月16日)