旧庁舎解体のアスベスト除去をめぐり次々に問題が明らかになっている大阪府守口市で、調査報告書の隠ぺい疑惑が持ち上がった。(井部正之/アジアプレス)

守口市が「公文書を保有していない」との理由で実際には保有・使用しているアスベスト調査報告書を「非開示」とした決定書の一部(井部正之撮影)

◆「保有していない」のウソ

守口市では2018年6月、旧庁舎の解体工事を発注。同12月からアスベストの除去を開始することになっていた。ところが、設置看板に虚偽記載があったことを皮切りに、アスベストの調査などに不備が見つかり、1月10日に工事が休止されている。

ずさんなアスベスト調査が問題になった結果、市は第三者機関による再調査を決定。市から要請を受けた「建築物石綿含有建材調査者協会(貴田晶子代表理事)」が2月中旬、現地調査を実施した。

その結果5月15日の住民説明会で、多数のアスベスト含有建材の見落としが判明したほか、違法工事とみられる施工も報告。筆者の指摘により大阪府が市を大気汚染防止法(届け出義務)違反の「可能性が高い」として指導した(拙稿〈<アスベスト問題>府が守口市を行政指導 旧庁舎解体で大気汚染防止法違反の「可能性高い」〉参照)。

上記の説明会で住民に配布された調査報告書は一部だけだったことから、筆者は説明会の翌16日、市に情報公開請求した。ところが同30日、市から「公文書を保有していないことから、非公開とします」との「非公開決定通知」が出されたのである。

説明会でも一部とはいえ配布されている報告書について、市が「保有していない」などということが本当にあり得るのか。

調査報告書は3月下旬に作成された。4月上旬には市が「思っていた以上に前回調査で見落としていたアスベストが見つかっていて対応が難航している」と市議会議員らに説明していることが筆者にも伝わってきている。また4月下旬、説明会の開催について問い合わせた住民に対して、市は調査報告書を入手済みであることを明かしている。

◆ 報告書保有も「公文書ではない」

5月15日の説明会で市は以前の調査結果と今回の再調査結果を比較し、その結果、どのようなアスベストの見落としが新たに見つかったのかを説明している。これは市が報告書を入手し、精査していたからできたことだ。なぜなら、市は調査者協会に対して前回の調査結果を提示せず、現状の調査だけを依頼していたため、同協会の報告は前回調査の結果をふまえた内容になっていないのである。

前回調査と今回の再調査の結果、新たに見つかったアスベストを知るためには、両方の報告書を突き合わせてみるしかない。前回調査の検証については委託していないため、市が自らその作業をする必要があった。

これらからも市が少なくとも説明会よりも一定程度早い段階で報告書を入手し、調査結果について精査していたことは間違いない。

市が報告書を「保有していない」などというのは嘘っぱちである。

事実、筆者が6月4日、市財産活用課に報告書を入手していながら「保有していない」との非開示決定はおかしいと指摘したところ、保有を認めているのである。

市情報公開条例は公文書を次のように定義している。

〈公文書実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、マイクロフィルム及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。ただし、官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数のものに販売することを目的として発行されるものを除く〉(第2条第2項)

市が「職務上作成し、又は取得した文書」で「職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」は「公文書」だと市情報公開条例は定めているわけだ。

今回情報公開請求した調査報告書は3月下旬から4月上旬に市が「取得した文書」であり、それ以降「職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有」し、実際に行政運営のために使用している。市の情報公開条例の定義からは「公文書」と判断するのが当然だろう。

ところが、市は報告書が「公文書ではない」と主張するのである。いったいどういうことなのか。

◆「借用」なら「収受」不要?

市は報告書の保有を認めた際、「収受がされていないのでまだ行政文書になっていない」と答えた。

つまり、報告書を「保有」は認めるが、「収受」手続きがされていないことから「公文書ではない」との主張だ。

同課によれば、「今後事前調査の報告が正式に元請けから上がってくる。出てきたタイミングで権限を有する文書になる」のだという。

守口市は「文書取扱規程」で、各課の「文書主任」が文書の受け取り、すなわち「収受」手続きとして、文書を開封して確認し、公文書であれば所定の箇所に「収受印を押印し、文書登録すること」などを定めている。

この考え方からすれば、調査報告書は市の公文書として、収受印が押されて登録・管理されているはずだが、どういうわけか現段階ではそれがされていないことになる。

市法制文書課は「(解体工事の)発注するにも意思決定していますし、業者から報告受けているとその時点で公文書になっているはず。お話を聞いた限りでは収受すべき内容だと思います」との見解だった。

文書を受け取っていながら収受手続きをせずに使用・運用することに問題はないのか。同課はこう答えた。

「民法第97条に到達主義が原則なので、到達されたとき、知ることができるときに(収受)処理することになっている。放置したら事務懈怠(なまけること)になってしまう」

また同課は市の文書取扱規程で、〈文書は、事務能率の向上に役立つように常に正確かつ迅速に取り扱い、適正に管理しなければならない〉(第3条第2項)と定めていることから、意図的に受け取りを遅らせることは許されないとも指摘する。つまり、今回の財産活用課の対応は市の文書取扱規程違反の可能性がある。

情報公開の担当課でもある法制文書課に事情を説明し、財産活用課が実際には報告書を保有していながら、「公文書を保有していない」ことを理由に非開示決定したことはおかしいとして、事実確認のうえで開示決定をやり直すよう求めた。しばらくして掛かってきた電話で回答が一転する。

「5月の説明会で配った資料は業者が用意したもの。市は一部借りたという解釈。情報公開があった時点では市の公文書ではない。持っているのではなく、借りているもの。受注者から発注者に正式に提出される時点で市のものになる。まだ市は正式に受け取っていない」

さらに法制文書課はこう続けた。

「借用ということで公文書の取得に当てはまらない。(公文書取扱規程の)公文書にも当てはまりません」
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