アスベスト規制の強化をめぐり議論が続く環境省と厚生労働省の有識者会議。両省が検討を始めてからときどき新聞の見出しに「規制強化」「規制拡大」の文字が躍る記事が掲載されるようになった。だが、今回環境省が示した法改正に向けた方針案の目玉として報じられているのは実際には同省がサボり続けた内容でしかない。(井部正之/アジアプレス)

9月2日の環境省・石綿飛散防止小委員会のようす(井部正之撮影)

◆14年サボってようやく規制へ

環境省は9月2日、中央環境審議会・石綿飛散防止小委員会(委員長:大塚直・早稲田大学大学院法務研究科教授)を開催し、来年に見込まれる法改正に向けた方針案を示した。

同省が所管する大気汚染防止法(大防法)で現在対象外となっているアスベストを含む成形板など、(1)いわゆる「レベル3」建材を法の対象に加え、事前調査や作業時の飛散防止を義務づけるほか、(2)事前調査の方法や実施する者の資格を設ける、(3)一定規模の改修・解体などの場合、アスベストの事前調査結果を届け出させる、(4)アスベスト除去工事の終了後に工事が適正に完了したのか目視点検させる、(5)作業基準違反に直罰規定を設ける──というのがその骨子だ。

一部で大きく報じられた改正方針だが、改正方針の目玉とされるのは(1)のアスベストを含有する成形板など「レベル3」建材対策だ。

だが、レベル3建材の規制は厚生労働省所管の労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で2005年から義務づけられている。

じつは当時から大防法でも規制が必要と指摘されていたにもかかわらず、14年間も放置していたのをようやく今回法的に位置づけるというだけに過ぎない。それだけ環境省が本来必要な規制をさぼっていたということだ。

(2)事前調査方法・資格の義務化、と(3)一定規模の改修・解体での事前調査結果届け出にしても、10年以上前から必要性が指摘されていたことを同じく放置してきたもの。これについては先行して示された厚労省の改正方針に合わせただけだ。

その証拠に届け出は厚労省が構築する電子届け出システムで行われ、届け出事項も同省が決定。環境省には決定権がない。しかも詳細を説明できず、委員から細かな確認をされても、「厚労省と相談させていただいて」と繰り返すばかりだった。

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