旧庁舎解体のアスベスト対策をめぐり次々不適正な状況が明らかになっている大阪府守口市。アスベストを含有する成形板など、いわゆる「レベル3」建材の除去で全面的にバールで破砕する府条例違反が9月中旬に判明。さらに複数の条例違反、契約違反まで発覚した。(井部正之/アジアプレス)

調査者協会の報告書に記載されたスレート片が散乱する守口市旧庁舎の本館3階更衣室の写真。アスベスト建材除去後の清掃も不適正だったことがわかる

◆届け出義務にも違反

守口市旧庁舎の解体で計約6300平方メートルにおよぶスレートなどアスベストを含有する成形板が使われていた。当初の作業計画では、2018年12月以降に約2か月間かけてビスや釘などを外して建材を割らずに原形のまま手ばらしすることになっていた。

ところが、実際には12月6~8日の3日間でアスベストを飛散させる可能性のある、バール破砕だったことが建築物石綿含有建材調査者協会(貴田晶子代表理事)の現場検証で裏付けられ、施工業者も事実を認めて謝罪したことを伝えた。(詳細は9月30日発表の拙稿〈<大阪・守口市>アスベスト建材「全体的にバールで破砕」認め謝罪 府条例違反か〉参照)。

府は「生活環境の保全等に関する条例」でレベル3建材の「原則手ばらし(原則として、手作業により原形のまま除去すること)」を作業基準に規定。また「除去後の石綿含有建築材料を破砕しないこと」も求めている。そのため、12月6~8日に実施されたというレベル3建材の撤去作業は府条例違反だった可能性が高い。

また市は今回の解体工事における特記仕様でレベル3建材の除去において「手ばらし」だけでなく、開口部を養生して湿潤化し、アスベストの飛散を防止するよう求めていた。よって、全面的なバール破砕という作業方法は府条例違反だけでなく、市との契約違反に該当するとみられる。

だが、問題はそれだけではなかった。

工事を請け負ったダイナ建設(大阪市)は当初手ばらしで撤去後、アスベストを吸い取る真空掃除機で清掃したとも説明していた。

ところが、調査者協会の現場検証により、「各棟のトイレの水回りの床面、流し台などにスレート板の破片が散乱」しているなど、清掃も不適切だったことが裏付けられた。

9月19日の説明会で清掃のことを聞いたところ、ダイナ建設は「作業場内は暗いので、陰に隠れたところなどで見落としがあったのかもしれません」と不適正なのはごく一部であるかのように釈明した。

しかし、調査者協会はこう反論した。

「(使われていた建材の)8割くらいが天井や壁の石こうボード。全体の1~2割が水回りとかトイレ、給湯室のスレート板。床に破片がパラパラとみられたのはほとんどスレートのところ。石こうボードはみたところバキバキに破砕されている。清掃されてなくてほとんど真っ白に粉がばーっと散らばっている状況がありましたね」

つまり、アスベストを含有する成形板が使われていた場所では全体的にきちんと清掃されたとは言いがたい状況だというのである。石こうボードはアスベストが含まれる時期が短く、アスベストが含まれていないことも多い。また含まれるのも紙側なので含有量も少ない。それに対し、スレートはほとんどがアスベスト含有で濃度も高い。

調査者協会は清掃の必要性を強調していたが、そうした理由の1つが不適正除去作業後にきちんと清掃されていないことだという。台風や突風などで周辺に再飛散することも考えられよう。
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