◆かくしてチョ・グク氏はネタになった

この20年間で、テレビを見る人は10%減ったとされる。各局が日中にずらりと情報番組を並べ、ネタも似たりよったりという現象は、緻密な分析と費用対効果を計算して編み出された、いわば安く視聴率を取るための一つの完成形なのだと思う。チョ・グク氏はネタになった。つまり視聴率が取れたのだ。情報番組が彼を連日取り上げた理由は、それ以上でも以下でもなかっただろう。

とはいえ、視聴率とは世相を測る物差しでもある。なぜ、韓国政権中枢のスキャンダルに、日本の大衆の多くが、かくも強い関心を示してチャンネルを合わせたのだろうか。
チョ・グク氏(右)は、結局、9月14日に法相を辞任。文政権にも傷を残すことになった。韓国大統領府発表写真より

8月中旬から、安倍政権と文在寅(ムン・ジェイン)政権双方から、対抗的な言動が飛びかい、日本社会の中には、文政権に対する反感と対抗意識がむくむくと沸き起っていた。そんな折、文大統領の側近であるチョ・グク氏の家族に続々と疑惑が生じ、韓国メディアは沸騰、チョ・グク氏も文政権も強い批判にさらされた。

それだけでは、日本のテレビが一斉に飛びつくようなことはなかっただろう。情報番組を強く引き付けたのは、「長身の美男子のエリート」、「対日批判の先鋒」というチョ・グク氏のキャラクターと、韓国で疑惑が続々と報じられたことだったと思う。

娘の大学不正入学疑惑、甥や弟の財産隠し疑惑、妻の職場の大学の研究室に強制捜査が入る、チョ氏本人が長時間の会見で疑惑を否定、文大統領が任命を強行…。このように、まるで連続ドラマのように新しい動きが続々出て来る展開は、実はテレビがもっとも得意とするパターンなのである。

ある情報番組がチョ・ググ氏で視聴率を取れたとなると、他番組もすぐ追随し、視聴率が落ちてくると、ネタは別のものに切り替わっていく。金正男暗殺事件、ボクシング協会の山根会長、テコンドー協会内紛…。節操などない。

最後になったが、情報番組の中でも、社会性の強いネタを丁寧に取材し、分かりやすく解説する優れたコーナーが作られていることは付言しておきたい。