◆携帯普及率は25%、盗聴も限界

携帯電話が急速に普及するのと並行して拡大したのが、他人名義の「飛ばし携帯」だ。やり方は単純。貧しい人に現金やコメを対価に携帯電話の登録をさせる。名義を貸す人を探し、端末購入から逓信所(電話局)での登録までを請け負う「ゴカンクン」と呼ばれる地下業者も各地に生まれた。名義を貸した人は、自分の名で登録された電話を誰が使っているのかわからない。

「『飛ばし携帯』を使って覚醒剤の売買、中国との密輸、その他の不法行為が急増しているとて、保衛局(秘密警察)が乗り出して、直接取り締まりを担当している」
協力者はこのように説明する。

北朝鮮では、「通話は盗聴される」のが常識であるため、当局に聞かれて困る話は、他人名義の「飛ばし携帯」でするわけだ。言い換えると、「飛ばし携帯」の横行によって、北朝鮮国内で「通信の自由」が生まれていたわけである。仮に、「飛ばし携帯」同士で、政治批判をしたり、金正恩氏の悪口を言ったりしても、当局が把握することが困難な事態が生まれていたわけだ。

「携帯電話を紛失した場合、すぐ逓信所に届け出なくてはならず、その記録は直ちに保衛局に通報されることになったそうだ。紛失後は直ちに使用停止処理にされる」と協力者は言う。また、携帯電話を購入すると、直ちに逓信所が、登録者と使用者が一致するか確認するようになった。

今年に入り、北朝鮮当局は、街頭の検問所で住民の携帯端末のメール、保存写真をチェックしたり、軍人の携帯電話使用を禁止したりするなど、携帯電話の統制を強化している。

北朝鮮の中で生まれていたささやかな「通信の自由」も、風前の灯のようである。(カン・ジウォン)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。