環境省が検討中の大気汚染防止法(大防法)のアスベスト規制「強化」をめぐり、2019年11月から12月にかけて実施したパブリックコメントで計3600件超の意見が寄せられていたことが明らかになった。これほどの数の意見が寄せられるのはきわめて異例のことだ。(井部正之/アジアプレス)

◆規制改正「不十分」95%超

同省が1月9日に開催した中央環境審議会・石綿飛散防止小委員会(委員長:大塚直・早稲田大学大学院法務研究科教授)で報告したもの。パブリックコメントのことはほとんど報じられてもいないのだが、494通もの意見が提出された。意見数ではじつに3611件に上る。とくに個人からが378通と8割近い。また自治体からも20通の意見が寄せられていることも特徴的だ。

同省の担当者も「非常に多くの意見をいただいた」と会議冒頭で触れせざるを得なかった。

意見が多かったのはかねて規制強化方針が「不十分」と専門家から指摘されていた内容ばかりだ。そうした意見を集計し直したところ3458件と全体の95.8%に達し、圧倒的大多数が同省の改正方針の不備を指摘していることが明らかになった。

たとえば同省が規制改正の目玉と説明するアスベストを含有するスレートなどの成形板、いわゆる「レベル3」建材について大防法の対象に加えることに関連し、除去作業の届け出や、届け出情報の開示を義務づけるよう求める意見が347件に上った。

同省は「届出を義務付けた場合は、件数が現行の5~20倍となることが想定される」などから、「都道府県等や発注者の負担を考慮する必要がある」として、「届け出の義務までは求めない」との見解を示した。

届け出情報の開示を求める意見に対しても自治体の「立入検査等により作業の状況を確認することで担保していくべき」と不要との考えだ。

お隣の韓国などではきちんと届け出を求めており、しかも届け出された調査結果や作業計画は「遅滞なく」自治体のウェブサイトに掲載される仕組みとなっている。測定結果の公表や大量漏えい時の公表義務づけなども環境省は規制不要との見解だが、韓国では同様に公表している。

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