お気に入りの三池淵地区の工事を視察する金正恩氏。2018年11月の労働新聞より引用

大多数の北朝鮮の住民にとって、新年というのはうんざりするような課業とともに始まる。元旦に発表される金正恩氏の長々とした「新年辞」を暗記しなければならないからだ。

ところが、2020年の元旦は「新年辞」が発表されなかった。金正恩時代になって初めての異例の事態だ。それに対し多くの住民たちは、戸惑いながらも安堵していると、両江道(リャンガンド)に住む取材協力者が1月3日に伝えてきた。

「新年辞」は、前年の成果を自賛中心に総括し、新年度の方針と展望を示す。金正日時代は、党などの主要三新聞の「共同社説」が発表されていたが、金正恩氏は毎年肉声でメッセージを発している。

金正恩氏の「新年辞」は元旦の発表後、すぐに職場や学校、機関で「通達講演」と呼ばれる集会が開催され、全国民に暗記が義務付けられる。

1月中旬くらいまで、繰り返し問答式や競演(コンテスト)式で暗唱を競わせる集まりが続く。唯一領導者たる金正恩氏が定めた一年の目標なのだから住民たちは手が抜けない。新年早々の大がかりな苦行なのである。取材協力者は、住民たちの反応を次のように伝える。

「暗唱大会がなくなて、皆ホッとしている。経済がひどく悪いのに、上で何の対策もないから新年辞も出せないんだろう。昨年は制裁のために市場での商売が上がったりで稼ぎも酷かった。だから、(新年辞で)何か国の新しい方針や方向を打ち出すかと思ったが、何の展望もない。虚しい『自力更生』だけを叫ぶんだろう」
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