(参考写真)密輸屋3人の銃殺情報が拡散している恵山市の市場。2012年に撮影アジアプレス

◆国境封鎖で物不足深刻 密輸は反逆行為と警告

第一報が入って来たのは2月11日のことだった。

「中国と密輸を行っていた7人グループが逮捕され、そのうち中国に渡って戻ってきた3人は銃殺された」

密輸現場となった鴨緑江上流の両江道(リャンガンド)に住む取材協力者Aさんは、このように伝えてきた。

この処刑情報は、瞬く間に両江道内で知られることとなった。しかし、具体的な日時と場所が曖昧な上、当局が、住民に恐怖を植え付けるために、架空の事件情報を流している可能性も考えられる。我われは情報収集を続けた。

数日後、両江道に住む別の協力者Bさんが、知りあいの保安員(警察官)に会って聞いた内容を次のように伝えてきた。

「事件があったのは2月4日で、場所は両江道の普天(ポチョン)郡の樺田(ファジョン)里。逮捕した密輸屋7人のうち中国に越境した3人が、『反逆行為』ですぐに非公開銃殺になったと言っていた。遺体は(コロナウイルス)感染の危険性があるからと、処刑後にすぐ火葬されたそうだ」

金正恩政権は、新型コロナ肺炎の国内流入を遮断するため、1月末(あるいは2月1日)から、中国との国境を全面封鎖している。輸入が途絶え、市場から中国産の物品がほぼ姿を消し、在庫の値段が急騰した。そのため、金儲けを狙って密輸を働く者が増えていたという。

Bさんによれば、この事件について調べる前の10日、居住する地区の人民班会議で、密輸行為を厳罰に処すという警告が通達されていた。次のように説明する。

「国全体がコロナウイルスを遮断するために、困難な中で防疫と統制を強化している時に、金儲けのために密輸行為をするのは反逆行為と同じだ。このような行為は軍法によって処理される、という内容だった」