政府が3月10日に閣議決定した、建物の改修・解体などにおけるアスベスト(石綿)の飛散防止対策を強化するための大気汚染防止法(大防法)改正案は4月上旬にも国会で審議が始まり、今国会中に成立の見通しだ。ところが、これが問題だらけなのだ。なにしろ罰則だけみても、つい最近発覚した露骨な違法工事が再び起きても罰せられないのである。(井部正之/アジアプレス)

大防法改正で新設する直罰規定の対象外となる2013年12月に名古屋市営地下鉄・六番町駅で起きたアスベスト飛散事故。「無差別テロ」のような事案でも対象から除外(2013年12月撮影・井部正之)

◆悪質違法工事「免罪」の実態

建物などの改修・解体をめぐっては、適正な事前調査が実施されずにアスベストを飛散させる不適正工事が相次ぐ状況が続いている。

総務省が16県における過去5年間のデータを調べたところ、52件で吹き付けアスベストなど飛散性の高い「レベル1~2」に分類される建材が事前調査で把握されないまま工事が始まっていた。そのうち29件で外部への飛散を防止する適切な対策なしに作業していた。こうした状況から総務省が2016年5月、厚生労働省や環境省などに改善を勧告。両省は2018年から改善に向けて制度改正の検討を開始してきた。

その集大成のはずの改正案だが、悪質な違法工事にすら罰則を掛けられない状況は変わらないありさまなのだ。

大防法で、かねて「欠陥」として指摘されてきた1つは、法規制を無視し、アスベストを意図的にいくら飛散させて周辺の人びとに吸わせたとしても罰則の適用がほぼ不可能であることだ。

たとえば、もっとも飛散性が高い吹き付けアスベストの除去で、同法で定めた対策を一切講じず、意図的に外部に飛散させたとしよう。本来必要となる飛散防止対策が省略でき、作業はごく短時間で終えることができる。それこそ早ければ1日で終わることもある。当然ながら費用は大幅に削減できる。

労働者や周辺住民による通報などでこうした手抜き工事が発覚しても、都道府県などはまず指導し、それに従わない場合、基準を守るよう命令する。命令にも従わなかった場合、初めて告発との手続きとなる。

指導を受けても「たまたま作業をわかっていない者が進めてしまった」などと適当な言い訳をでっち上げて、形だけ従ったふりをしてさっさと作業を終えてしまえばよいのだ。いくらアスベストを飛散させようが「指導に従っている」「反省している」と判断され、お咎めなしというのが実態である。

そもそも指導した現場について、約2割の自治体が改善状況を確認していないことが総務省調査で明らかになっている。そのため、過去にアスベストの不適正工事による告発は1件のみ。罰則適用どころか起訴された事例すら存在しない。

今回の大防法改正における同省が「大分苦労した」と説明するのが、悪質事案に対し、指導や命令の手続きなしに罰則の適用が可能となる「直接罰」を導入したことだ。同省大気環境課は「作業基準全部でないが、一番クリティカルなところを直罰の対応とした。明らかに周囲に非常に多量の石綿をまき散らすものを対象とした」と強調する。
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