(参考写真)国営メディアの信用度は低く、住民たちは口コミで情報拡散させる。写真は市場近くに集まって話す女性たち。2013年8月に恵山市で撮影アジアプレス

◆当局の沈黙が疑心呼び噂広がる

「金正恩が死んだとか手術したという噂が、市場で商売している女性たちの口にまで上るようになった。保衛員(秘密警察官)が『流言飛語だ』として、情報を流布させた者の割り出しと取り締まりを始め、殺伐とした雰囲気だ」

北部地域に住む取材協力者Aさんが、4月28日にこう伝えてきた。

韓米メディアが22日に金正恩氏の重体説、手術説を報じて以降、世界中で「金正恩異変情報」が流れた。筆者が北朝鮮国内の知人に情報を知らせようと23日に電話したところ、彼はすでに知っていた。それから一週間、「金正恩異変情報」は急速に国内で拡散している。

◆中国からの情報遮断に躍起 秘密警察要員を増員

情報が入ってくるのは主に中国からだ。アジアプレスでもそうしているように、中国の携帯電話を密かに搬入して外国と連絡を取り合う人が、北部国境地域には大勢いる。主に中国に親戚がいる人、貿易関係者などだ。

「当初はデマだ疑う人が多かったが、中国のあちこちの筋から似たような情報が入ってくるので、信じる人が増えている」とAさんはいう。

外部情報の流入阻止に躍起の北朝鮮当局は、中国の携帯電話の取り締まりに注力してきた。
両江道の中心都市・恵山(ヘサン)市に住む別の協力者Bさんは、次のように言う。

「3月初めに平壌から5人組の国家保衛省の取り締まりチームが来て検閲を始めたが、つい最近、人員が増派されてきた。金正恩異変情報が主に両江道から入って来るからだ。特に標的になっているのは貿易会社の職員。中国の取引先と頻繁にやり取りしているからだ」

Bさんは、この数日間に自分の周辺でも2人が理由もなく道保衛局に呼ばれて調査を受けとして、次のように説明した。
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