◆ビラに千倍百倍でやり返させと大騒ぎ

――「最高尊厳」に手を出したせいでこんな問題が生じたと言うわけですね。戦争も辞さずというような宣伝はしていますか?
A  ええ。会議の中で強調されているのは、(金正恩)将軍様は私たちの「最高尊厳」であり、わが民族の首領、太陽だ。それ侮辱することは許せない、(韓国側が)手を出してくるのなら、千倍百倍でやり返さなければならないと大騒ぎしています。こちらの当局の立場としてはそうなるでしょう。

――北の人々はそのように振る舞うしかないのでは? 国内の雰囲気は当局によって準備、演出されたものだと思いませんか?
A 淫らなビラを撒いたそうですね。私から見ても、皆、怒っているように見えます。ビラの件で昨日、保安員(警察官)と話をしましたが、すべて米国が韓国を後ろで操っているのだと言っていました。今回の(爆破の)件は、文在寅は正しく行動せよという警告のように見えます。

――爆破した南北共同連絡事務所の建設費用は韓国が170億ウォン(約15.5億円)も負担しました。一方的に爆破するのは間違っていませんか?
A 正しいことだとは思いません。でも、将軍様を冒涜するなら戦争も辞さず、というのがこちらのやり方なんです。金額は関係ないでしょう。

――北の民衆がずっと苦しいのは、金正恩政権が核兵器を放棄しないために制裁を受け、そこにコロナウイルスまで重なったからです。
A 人民が困窮しているのは核を放棄しないせいだと、私は分かっています。でも上部で、我われが米国に呑み込まれないのは核があるからだ、放棄してはならないとずっと言い続けてきたので、庶民の中にも、核があるから民族の尊厳が守られると信じている人は少なくありません。

◆経済難の不満を反韓キャンペーンが吸収

A氏によれば、人民班や所属する組織で連日、脱北者と文在寅政権糾弾の集会や学習会が開かれているという。コロナウイルス防疫のために、1月末に中国国境を閉鎖して以降、北朝鮮の経済悪化は深刻の度を増しており、庶民から幹部まで不満が募っている。

この2年間の南北対話によっても、暮しはまったく良くならなかったという失望が北朝鮮国内に広く定着しており、金正恩氏を非難するビラ飛ばしをきっかけに始まった反韓国キャンペーンが、住民の間で一定の共感を得る結果を生んでいるようだ。(連載2へ ≫