◆金与正は自己顕示欲強い「出たがり」か?

整理してみよう。

(1) ロイヤルファミリーの一員であることをアピール。

(2) 労働党中枢での地位を急上昇させた。

(3) 金正恩を補佐する姿を露出して内外に存在を印象付けた。

(4) 異例の署名談話を出して体制内の実勢を誇示。

「白頭の血統」、職位、実勢の三位一体で内外に金与正の存在を露出させてきたのは、体制内での「ナンバー2化」を図ることが目的だったと筆者は見ている。実権の伴わないお飾り(顔マダム)ではなく、最高権力の「継承順位1位」であるとアピールする手続きだったと考える。

特徴的なのは写真・映像を多用していることで、しかも金与正は露出することに喜々としているように見える。自己顕示欲が強い「出たがり」であるという印象だ。「兄思いの健気でかいがいしい妹」に甘んじず、権力の階段を上って行くのだという意志を感じるのだ。

平壌空港に降り立った文在寅大統領夫妻を金正恩夫妻が出迎えた。真ん中でちゃっかり写真に納まり存在感をアピール。2018年9月18日。平壌共同写真取材団撮影。

◆金一族支配の「永続化と純潔」を最高綱領に明記

北朝鮮における最上位の規約は憲法、労働党規約ではなく、「唯一的領導体系確立の10大原則」という対外非公開の綱領である。要約すると、労働党員はもちろん、全国民・全組織が、ただ金正恩(党と表記)に対してのみ、絶対忠誠、絶対服従せよということが延々と書かれている。すべての国民は「10大原則」に基づいて、金正恩の領導(指導)を毎日の生活と行動の指針とすることが義務付けられ、所属する組織で毎週1回の「生活総和」という会議でチェックを受ける。

アジアプレスが入手した「10大原則」の原本。手のひらサイズの総56ページ。(撮影アジアプレス)

「10大原則」の内表紙。出版は朝鮮労働党出版社。(撮影アジアプレス)

「10大原則」は金日成―金正日時代の1974年に作られ、2013年6月に金正恩時代に合わせて改定された。その際、「わが党と革命の命脈を白頭の血統で永遠に保ち(中略)、その純潔性を徹底的に固守しなければならない」という一文が加わった。つまり、金一族以外の指導者はあり得ないこと、権力の世襲継承を永遠に続けていくことが、最高綱領に明記されたのである。

(参考記事) 隠されし北朝鮮の最高綱領「党の唯一的領導体系確立の10大原則」全文と解説(全7回連載)

これは、若くて未熟な金正恩に代替わりするにあたり、海千山千の実力者たちが、軍や党内の基盤を背景に金正恩をコントロールしたり、金一族支配を脅かしたりすることが起こらないように、強力な統制装置を置いたものだ。実際、この装置が稼働して大量の血の雨が降った。