(参考写真)普段の恵山市場前の通りの様子。ロックダウン中は市場は閉鎖された。2014年9月に撮影アジアプレス

◆中国との密輸摘発でコロナ厳戒態勢

北部の両江道の中心都市・恵山(ヘサン)市で、新型コロナウイルス流入の疑いがあるとして、11月2日から市全体のロックダウン(封鎖)が続いている。一切の外出が禁じられており、食物を確保できない住民と当局の間で摩擦が生じている。餓死者が発生しているとの情報も数多く伝わってきている。(カン・ジウォン/石丸次郎)

恵山市に住む複数の取材協力者が伝えてきたところによると、ロックダウンの理由は中国との密輸事件が摘発され、当局がコロナウイルス流入の可能性があると判断したためだという。

韓国の北朝鮮専門メディアのデイリーNKは、国境警備隊による密輸が発覚したためだと伝えている。また、米国のRFA(自由アジア放送)は金塊の大量密輸が発覚したためとしている。

完全にロックダウンされた恵山市では、住民たちの外出が一切禁止され市場も閉鎖された。

隣の家に行くこともできない。保衛局(秘密警察)と安全局(警察)の車両以外、市内はアリ一匹歩いておらず、出勤、動員に出る人もいない

恵山市の協力者Aさんは19日、現地の様子をこのように伝えてきた。

北朝鮮地図(製作アジアプレス)

◆外出禁止で飢える人も

ロックダウンによって住民生活に深刻な影響が出ている。まず市場が閉鎖されているため食品購入ができなくなった。当局では、人民班長と「奉仕員」と呼ばれる行政職員に各世帯を巡回させてコロナの症状がないか確認し、コメ購入の代行もしているという。

恵山市の別の協力者Bさんは、封鎖下の食事事情について次のように述べた。

奉仕員が各世帯に中国米10~20キロを運んでくれるがまったく足りない。それも市場価格よりも少し安い1キロ3000ウォン台で購入しなくてはならない。金のない人たちは飢えることになり、外出もできないことに激しく抗議している

協力者たちによれば、外出が許されないため、現金を持たない人は家財道具を売って食べ物に替えることもできず、近隣の農村に落穂拾いに向かおうとして検問で止められて小競り合いになるなど、トラブルが頻発しているという。

また住宅街の共同便所も時間交替制になっており、家の中で尿瓶(しびん)で処理して後に捨てているそうだ。