魔法瓶、電気炊飯器、弁当箱、ガラスコップ・・・中国製の新品が並ぶ(安哲撮影・RENK提供)

 

◆軍人も警察も密輸に走る
「軍人も警察も保衛部(秘密警察)も党の幹部たちも、暇さえあれば商売してる。今や、北朝鮮中の人間が商売をやって生き延びてるんですよ」
数時間前に恵山市から国境の川・鴨緑江を中国に越境して来たその男は、妙に明るい表情で私にこう言った。保衛部の中堅幹部だという30代後半のこの男を、仮にA氏としよう。A氏は恵山市の対岸の中国側(吉林省長白県)の朝鮮族B氏とつるんで、長年密輸をやってきた。保衛部員という安定した職業があるため、密輸はアルバイト感覚だったという。
「これまで北朝鮮から入って来ていたのは漢方薬材料、クズ銅、マツタケ。それから麻薬...俺はやらないがね」
とはB氏の弁だ。

市場で売られているスイカやブドウなどの果物も中国からの密輸品だという。(安哲撮影・RENK提供)

一方、中国からは現金、そしてありとあらゆる日用品が渡っていくという。北朝鮮のA氏は「しかし、今は世の中が変わったんだ。警察や保衛部は家族の分まで食糧配給あるけれど、給料は固定だ。もっといい暮らしをしたければ商売をしないとね」と言う。

そのA氏が「儲けている」と顔をほころばせながら言う最近のヒット商品は、なんと中国製の中古テレビ、ビデオ機器なのだという。一晩に数10台をゴムボートで北朝鮮側に渡す。もちろん仲間がおり、国境警備兵も抱きこむ。北朝鮮側の支払いは、中国元やドルの現金だという。

「私の月給は3000ウォン(実勢レートで約400円)、でも密輸をやれば一月10万ウォン(約1万4000円)になることもある」
とA氏は言うのだ。しかし、飢える国北朝鮮でいったいテレビやビデオなど誰が買うのだろうか?
(この回、次回に続く)
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