「21世紀の太陽金正日将軍万歳」というスローガンの巨大モニュメント。北朝鮮国内のいたるところにある。(98年4月)

 

対韓国工作のためにアベックや女子中学生をさらっていったこと、それが日朝間の最大の懸案になっていることや、金正日総書記が罪を認め謝罪したことを説明すると、彼、彼女らは一様にショクを受けた表情を見せた。
なぜ、北朝鮮政府は最高指導者が公式に認めた拉致事件を国民に知らせないのか?――ほとんどの人の分析は
「金正日将軍が日本に謝罪したなんて人民に知られたら、最高指導者の権威が失墜しますからね」

「過去の侵略で日本が謝ることはあっても、わが国が日本に対して罪を、しかも少女を誘拐するというハレンチな行為を犯していたなんて知られると、人民はますます政府を信用しなくなるから」
というものだった。だが、また共通して言うのは
「政府がいくら隠しても、金正日が謝るような重大事件は、いずれ口コミで広がっていく」
というものだった。

中国で潜伏生活を続ける北朝鮮難民一家。このような難民たちが、逮捕され北朝鮮に送還される際、外部情報を持ち帰ることになる。

 

不可逆な口コミ情報――人々の意識の変化はもう止まらない
これまでのリポートでは、97年頃から中国に越境・脱出した膨大な数の人々が、大量の外部情報を北朝鮮国内に持ち帰ったこと、急速に蔓延する「原始的市場経済」の働きによって、外部情報も商品となって北朝鮮国内で急速に流通していることについて報告した。
北朝鮮国内に日々持ち込まれる情報は、メディアに載ることはなくても、口から口へと伝わり何十倍にも拡がっていたはずだ。そして、食べればなくなってしまう食糧とは違って、持ち込まれる情報は消し去ることのできない不可逆なものだ。

独裁維持の要(かなめ)のひとつである情報統制が、今、末端から少しずつ崩れ始めている。新しい外部の情報に接して、北朝鮮の人々は、己の苦境や不自由の原因について、客観的に考える材料を日々手にし始めているといえよう。そして、外部情報に触れるにしたがって、人々の意識は必ず変化する。

民衆の意識の変化が、いつ、どのような形で、金正日体制に影響を及ぼすのか、それを予測するのは簡単ではない。現時点でいえるのは、こうしている間にも外部情報は北朝鮮国内に流入しており、日々人々の意識に変化をもたらし続けている、そしてそれは、もう止めようがなくなった、ということである。

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