日の丸・君が代強制実施で脅かされる人権 ~A教諭の問いかけ~
卒業式から約二週間後の四月六日、A教諭への処分は発令された。
「減給一ヵ月の十分の一、ひどいよね」
都庁第二庁舎にある教育庁人事部から出てきたA教諭は、こうつぶやいた。どうやら免職は免れたらしい。
この前日に、事情聴取の呼び出しを受けていたA教諭は、弁護士とともに都教育委員会を訪れていた。

再度、弁護士同席での聴取をと申し出たA教諭に対し、人事部担当者は正当な理由を述べずにこれを拒否した。結局、事情聴取はなされぬまま、処分内容は一方的に決定された。これは、A教諭だけではない。都教育委員会は他の教員に対しても、弁護士同席での事情聴取を認めなかった。

処分発令のこの日、都庁には多数の教師仲間たちが集まっていた。最も重い処分を受けることになるA教諭の心境を察し、彼女を支えようと集まってきた友人たちである。教育庁の入り口付近まで同行しようとした彼らの前に、グレーのスーツを着た一団が行く手を立ち塞いだ。

彼らに対して築かれた「権力の壁」であった。廊下で押し問答をする一同に向かって、教育庁の人事部担当者は「命令します、A教諭だけすみやかにお入りください。」と、命令を下していた。
「これが公の教育行政たるものの姿なのか」
応援に集まったA教諭の友人たちは、上意下達を徹底しようとする教育庁の姿勢に唖然とした。

「上からの命令にただ従っていくだけでは、どんどん世の中が悪くなっていきますよ。自分の良心を目覚めさせてください。命令という形で済ませていくことが、ゆくゆくはあなたたちの子どもの命だけでなく、私たちの人権が奪われることになっていくんですよ。私たちはその盾ですよ」
処分を受けたA教諭は、帰り際にグレーの一団へ向かってこう諭した。その目からは、涙が溢れていた。
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