「共和国は我々在日に拉致などないと言い続けてきた。在日は日本社会にそう訴えてきた。それが全部嘘だった。共和国が在日を捨てた瞬間だった」
二年前の小泉訪朝直後、総連組織で働く在日の友人が吐き捨てるように言ったことが思い出される。

高い代償を払った結果生まれたのは、日朝関係の改善ではなく混迷だった。拉致を認め謝罪した後の北朝鮮側の対応のまずさ、いい加減さ、そして11月の再調査報告を見ると、彼らなりの利益に鑑みても、金正日政権が合理的政策決定が出来ない深刻な機能不全を起こしているように見える。

現在の北朝鮮の権力構造は、金正日総書記が絶対権力者として君臨する中、その権力に挑戦する可能性のある勢力や派閥は存在しないと思われる。軍部、労働党組織、公安機関などの権力機関は、各々の利益のために、最高権力者の金正日にいかに取り入るかという競争を繰り広げている。

拉致を認めて対日関係改善を図るとする戦略が実行に移された後、「金正日の権威を守護せよ」「払った代償を早く取り返すため交渉急げ」「一部被害者を日本に返した後は、日本の反発冷めるの待て」などなど、目先小手先の戦術を、周辺が金正日に提案して、互いに牽制・足の引っ張り合いをしているように思えてならない。
(続く)石丸次郎 拉致問題を考える2回へ

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