【拉致から間もなく北朝鮮で撮影された横田めぐみさん。被害者家族はブッシュ政権の「変節」をどう受け止めただろうか】

さて、テロリスト支援国リストに入れられると、どのような扱いを受けるのかを見ておこう。
まず、軍事物資関連の品目や技術の貿易が止められる。そして、米商務省の統制品目に含まれる、軍事転用可能と見なされる民間用物資の貿易も止められる。
国際金融機関の借款供与も実質的に受けられなくなる。
また、一般の貿易優遇措置や、北朝鮮への投資者は、税制優遇も受けられなくなる。
北朝鮮が、テロ支援国指定解除をまず実現したいと考えるのは、それが、対米関係改善の入り口にある関所のようなものだからだ。ここを通過しない限り、関係改善の次のステップには進めないのだ。

急展開!米国はリスト除外を決意か
テロ支援国解除は、もはや時間の問題だろう、と書こうとしていたところに、ソウル発ロイター伝が「米国が北朝鮮をテロ支援国リストから除外することに合意したと、朝鮮中央通信が伝えた」と報じた(9/3付け)。
9月1、2日にスイスのジュネーブで行われたクリストファー・ヒル次官補と金桂寛(キム・ゲグァン)外務次官との会談で話し合われたのは
1.北朝鮮の核施設無能力化とすべての核プログラムの報告の問題
2.北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除問題
3.敵性国交易法の適用終了問題
4.日本人拉致問題、など、と各メディアが伝えていた。
会談では相当具体的でつっこんだ話し合いがなされたと思われる。
ロイターの報道が事実ならば、米国から日本政府には事前に通告があったはずだ。
当然日本政府は、条件、あるいは要望を出したことだろう。
9月4-5日にモンゴルで開かれる日朝国交正常化部会で、いくつかの新しい展開が見える可能性がある。
・よど号グループ(およびその妻子)の北朝鮮からの離脱・帰国
・北朝鮮による拉致問題の再調査表明
この2点が北朝鮮側から提示される可能性があると思う。

求められる新しい対北朝鮮外交
米国とはつくづぐ自分勝手な国である。
数年前まで、ブッシュ大統領は北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、レジームチェンジ(体制転換)にまで言及していた。その威をバックに、日本でも多くの政治家や評論家、ジャーナリストが「さらに圧力を!」と叫んできた。
だが、その言説が、外交上、本当に有効たり得るものなのか、勇ましいだけで内容の無いものなのか、省みられることはあまりなかった。
米国の心変わりを「裏切り」と嘆いても詮無いことである。
むしろ、対米追従一辺倒から自立外交への奇貨とすればよい。
政治家には、新しい対北朝鮮政策のあり方を大いに議論してもらいたい。
言い換えると、日本は朝鮮半島政策の建て直しが急務になっているのだが、参院選で大敗北を喫した安部首相は、己のレジームの延命に汲々として、それどころではないのかもしれない。

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