090314_kim_002.JPG【朝高ラグビーチームの応援席の横断幕は「勝て!われらが選手は素晴らしい」。韓国KBS放送も取材し「日本で活躍する在日同胞」と伝えた】(2006年/花園ラグビー場/FILE/ASIAPRESS)

秋山選手が出演したトーク番組を見てファンになったという女性会社員の崔慶芽(チェ・ギョンア)さん(33歳)はこう言う。
「色黒の荒くれ男というイメージしかなかったが、波瀾万丈な自分の人生を、ユーモアを交え、上手ではない韓国語だが、一生懸命に語ろうとしている姿にグッときた。自分のルーツがどこかをちゃんと認識していれば、日本国籍だなんていうことは気になりません」
秋山選手は近畿大学を卒業後、98年に「韓国代表になるため」釜山市庁柔道チームに入る。しかし、派閥争いが激しい韓国柔道界ではなかなか国家代表になれず、失意のなかで日本に戻り、01年に日本に帰化した。

インタビューのなかで「日本では韓国人として生きていたのに、韓国人としてでは在日は異邦人として扱われる」と言った彼は、02年に開催された釜山アジア大会では日本代表として出場し、韓国選手を破り、金メダルを獲得した。

しかし、今でこそ韓国で大ブレークしている鄭大世も秋山成勲も、10年前の韓国だったら「祖国を捨てた裏切り者」扱いされていただろう。ウリ(我々)を強調し、強いナショナリズムを求める韓国社会では、韓国人が"北朝鮮人"として、あるいは"日本人"として来ることは許せない、として少なからぬ非難にさらされていたはずだ。

韓国人はあまり「在日韓国・朝鮮人」の歴史を知らない。「在米韓国人」と同じような扱いをしている人々も少なくないだろう。これまで日本で活躍した在日韓国・朝鮮人のスポーツ選手や芸能人の話が韓国に伝わると「韓国人はやはり日本人よりすごい!すばらしい」と民族性を強調した。でも、結果を残さないと「半分は日本人だから」というような扱いだった。

今回の鄭大世と秋山成勲ブレークは「在日」を「在日」として認めてなかった過去から、「在日」を「在日」として認めてくれる時代に変えてくれたとも言える。

2人の活躍に、韓国での在日コリアンの存在の未来が見えてくるような気がする。彼らをこれからも応援したいと思う。
(サンデー毎日「朝鮮半島を読む」掲載記事を加筆・修正)