豆満江を渡り再び北朝鮮へ
(文) チャン・キルス

流れの速い豆満江をわたる ミング兄さんと、命がけで豆満江を越え、再び北朝鮮に戻らなければなりませんでした。 ―キルス

流れの速い豆満江をわたる
ミング兄さんと、命がけで豆満江を越え、再び北朝鮮に戻らなければなりませんでした。 ―キルス

 

北朝鮮側の川辺に着いてすぐ、ぼくはびしょぬれになった服をしぼり、急いで身につけた。それから知りあいの家に向かって歩き出した。
目ざしていた家にほとんど着いた時であった。道の向こうから来た普段着を着た2人の若者がぼくたちを呼びつけ、来いと言った。

ミング兄さんはとっさに持っていた中国のお金をトウモロコシ畑の脇の草むらに放った。ぼくもすばやく1枚の100ドル札を口に入れた。
彼らは道の安全局の安全員(警察官)だった。

「お前たちどこに行くんだ?」
「親戚の家に行きます」

「どこなんだ?」
ぼくは知り合いの隣家の名前を告げた。
彼らは、その家にいっしょに行こうと言った。しかし、その家では、ぼくたちのことを知らないと切り捨てるように言った。

仕方なく、よく知っている家の住所を教えた。再びそこに向かったが、その家でも同じようにぼくたちのことを知らないと言った。
ぼくが話したことはすべて嘘となってしまい、彼らはぼくたちを連れて駅の方に向かった。

駅前では軍人たちが線路の補修工事をしていた。その時、どこからか国境警備隊の小隊政治指導員(注・北朝鮮の軍隊には、各部隊、小隊ごとに政治思想を担当する兵士がいる)が現れた。すると安全員はぼくたちのことを「中国非公式訪問団」だと言った。

指導員は、「いつ行ったのか、何回行ったのか、何を食べたのか、米のご飯はたくさん食べたか、豚肉もあきるほど食べたのだろう?」ときいた。
ぼくは中国に一度も行ったことがないと言った。ただ親戚の家に食糧をもらいにリュックを背負ってきて、豆満江で水浴びをして帰るところだと話した。
(つづく)
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