規律なきデノミが超インフレ招いた
そもそもこのデノミ、始まりも国民に対する予告すらなく唐突だったが、運用のルールもでたらめである。
例えば、上記のように、現金と預金で新ウォン切り替えの比率が10倍も異なる。

教員や労働者の公定の月給はほぼ据え置き(つまり100倍になった)、一部の協同農場員に対しては一時金を一人当たり1万五5000ウォン支給した。これは旧ウォンなら150万ウォンで農民の実質年収の10年分に当たる額だ!

このように、裏づけがあるとは思えない新ウォン支給をしたり、交換比率をケースによって変える一方で、昨年末には外貨の国内での使用が全面禁止された。
新ウォンへの信頼が瞬く間に下落したのは当然の帰結だったといえる。

おまけに個人の商行為も厳しく制限されている。
地域によっては市場が開かれる日が縮小されたり、扱える商品の種類と量が制限されたりしている。

国営商店を利用するようお触れが出されたが、その国営商店には物がないのである。
「毎日あれよあれよという間に物価が上がる。売り惜しみが横行してヤミ市場にも物が出てこない」
北朝鮮内部の取材協力者たちの弁だ。

コメの価格だけを見ても、デノミ直後は公定価格に近い1キロ40ウォン台で販売されていたのが、政府に供給能力がはないため国の食糧販売所からコメは消えた。
ヤミ価格は1月18日時点で各地で200ウォンを超えた。

同23日には北部の清津市、茂山郡で600-650ウォン、2月に入ると1000ウォンを超える地域が続出している。
デノミ実施から二か月で、米価は約25倍の上昇である。
デノミはインフレ退治どころかハイパーインフレを招いてしまったのだ。
(続く)

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