レートの変動幅も同様...外貨商の商売も成り立たず
北朝鮮で物価が安定せず、庶民の暮らしの混乱が続いていると、アジアプレスの北朝鮮内部の通信員が伝えてきた。北朝鮮では昨年12月1日に突然実施されたデノミネーション((新ウォンへの通貨切り下げ)によって、一時30倍以上に食糧価格が暴騰するなど、経済混乱が続いていた。

それでも3月半ばから米価はじめ消費物資全般の価格は下がり始めていたが、4月下旬頃から再び価格の上昇が見られるという。
北部の咸鏡北道に居住する通信員が電話で伝えて来たところによると、3月上旬に1キロ1500ウォンの最高値を記録した白米の価格は、その後4月中旬に400ウォンにまで下落。

4月後半に入って再び上昇に転じたという。4月24日の白米価格は650ウォンに上昇、トウモロコシなど他の食糧価格も一週間で急騰した。食糧価格上昇の傾向は5月に入っても続いており、最新の情報によれば5月6日の白米価格は700ウォン、トウモロコシは300ウォンの値を付けている。近隣都市でも同様に物価上昇に転じたという。

食糧価格の高騰は庶民の暮らしを圧迫する。2008年8月平安南道 撮影:チャン・ジョンギル cアジアプレス、チャン・ジョンギル

食糧価格の高騰は庶民の暮らしを圧迫する。2008年8月平安南道 撮影:チャン・ジョンギル cアジアプレス、チャン・ジョンギル

 

北朝鮮では、毎年6、7月にジャガイモ、8月にトウモロコシが収穫されるまでの端境期は「ポリコゲ」と呼ばれる「春窮期」にあたり、食糧価格が上昇する傾 向がある。情報を寄せた通信員は「デノミによる混乱で庶民の現金収入は減っており、そこに食糧価格が上昇すると飢えに苦しむ人が出るだろう」と、春以降の 暮らしを心配した。

個人が傾斜地などを勝手に耕す「小土地」で、6月の農繁期に農作業を行う咸鏡北道の人々。2005年6月 撮影:石丸次郎 cアジアプレス、石丸次郎

個人が傾斜地などを勝手に耕す「小土地」で、6月の農繁期に農作業を行う咸鏡北道の人々。2005年6月 撮影:石丸次郎 cアジアプレス、石丸次郎

 

一方、中国元のヤミ交換レートも4月中旬には100元あたり9000ウォン前後で推移していたが、4月23日の時点で100元あたり16000ウォンに急上昇したという。しかしながら5月6日現在、人民元100元あたりの交換レートは11000ウォンまで下がるなど、日によって乱高下を繰り返している。

通信員によると「レートが乱高下する理由は分からない」としながらも、「ドルも同様に下がっており、外貨商(外貨の交換差益で儲ける人)の商売が成り立たない」状態だという。

アジアプレスでは中国と隣接する北朝鮮北部の数都市に、中国の携帯電話を搬入して北朝鮮内部の情報を収集している。(石丸次郎)

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