廊下から授業中の教室が一瞬見えた。壁に金日成、金正日親子の肖像写真が見える。(2006年6月 リ・ジュン撮影)

廊下から授業中の教室が一瞬見えた。壁に金日成、金正日親子の肖像写真が見える。(2006年6月 リ・ジュン撮影)

 

学校と生徒の間で板ばさみの教師たち 3
取材 リ・ジュン

教師の貧しい暮らし向き
リ:ミョンチョルの勉強はどうですか? あれはなかなか利口な子ですが......。
先生:(転校してきて間がないので)勉強についてはまだよく分かりません。でもうちの学校の子たちは腕白やおませな子が多くて、しばらくは慣れるのに苦労するかもしれません。

リ:おませな子?
先生:最近の子どもたち、特に女の子たちには教師もかないませんよ(苦笑)。彼女たちの方が教師よりも世間を知っているというか......、私たちよりも考えも行動も進んでいますから。勉強はともかく文化意識といいますか、そんな面で水準が高い子が多いです。洋服を着るにしても、髪の毛をセットするにしても......、化粧だってするんですよ。校長先生よりも良いクリーム、何千ウォンもするクリームを塗ってる子もいる。そんな子はどんなに洗練されていることか。私たちは一日中、学校で子どもたちと一緒にいるだけじゃないですか。外に出ている子どもたちの方が、ずっといろいろ知っていることがあるんです。教師は井の中の蛙というか......。

リ:そうですか......。それでも先生は配給面でも優遇されているし......。
先生:(さえぎるように)そんなことはありません!

リ:えっ? それじゃあ生活費は?
先生:私たちは生活費(月給のこと)が毎月二七〇〇ウォンです(注1)。配給は去年、お米を二度ほどちょっと貰っただけなんですよ。今ではまったくありませんし。

リ:じゃあどうやって生活を?
先生:考えてみてください、教師の暮らしがどんなに大変か......。ソバをおかゆにして何とか生きている先生もたくさんいます。私の家の場合はそれでも、夫が道の党委員会にいて子どもの分まで配給を貰えるから何とかなっていますが、一番安いソバを食べて凌いでいる教師が大勢います。

リ:うーん、そんな話は初めて聞きましたね。教師という仕事は食べていくのに問題がないと思ってました。
先生:地域によっては教師がいい目をしている所もありますよ。清津(チョンジン)市の水南(スナム)区域なんかでは、教師の誕生日にプレゼントとして家庭用品なんかを生徒の親たちがくれるそうです。卒業するときにも冷蔵庫を記念にくれたり......。

リ:そんな話を聞いたことがあります。
先生:うちの学校でも、去年から卒業する生徒たちがプレゼントをくれるようになりました。でも質が悪いものばかりです。誕生日なんか、二年間同じ子どもたちの担任をやっても、お祝いをもらったことがありません。はっきり言って、この学校は教師をやる張り合いがないんですよ。

リ:世間で聞く話とはなかなか違うようですね(苦笑)。
先生:例えば父兄会の委員長が熱心だったりしたら、洋服の一着も作ってもらえるのでしょうが......(注2)。うちの学校にはそういったことはありません。そんな事情も知らず生徒の親たちは「なぜこんなに税外負担が多いんだ」なんて言いたい放題ですからね! それで耐えかねたうちの学校の教師たちも、もっと良い待遇を求めて違う地域の学校に移ろうとする人が何人かいました。
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