「甑山郡全体が教化所?」 甑山教化所はここだと、地図上で特定地点を指し示すことは難しい。甑山郡の海沿いや山あいなどのあちこちに、11の管理課が分散して配置されているからである。いわば甑山郡全体が収容施設のようなものなのだ。共通しているのは、収監者に強制労働として甑山郡の広大な農地を耕作させることだ。外国人に見栄えよく造られた首都・平壌からわずか30kmしか離れていない所にあるのには驚く。

「甑山郡全体が教化所?」
甑山教化所はここだと、地図上で特定地点を指し示すことは難しい。甑山郡の海沿いや山あいなどのあちこちに、11の管理課が分散して配置されているからである。いわば甑山郡全体が収容施設のようなものなのだ。共通しているのは、収監者に強制労働として甑山郡の広大な農地を耕作させることだ。外国人に見栄えよく造られた首都・平壌からわずか30kmしか離れていない所にあるのには驚く。

 

インタビュー:強制送還された脱北女性の証言4

聞き手 石丸次郎
リムジンガン編集部は脱北難民が多数収容されている平安南道の甑山(ジュンサン)教化所に収監された経験を持つ女性三人を取材する機会を得た。これまでの記事で、そのうちの一人が中国で逮捕されて北朝鮮に送還されるまでの取り扱いと、北朝鮮での拘留、取り調べ、裁判、そして甑山教化所に送り込まれるまでの過程を、インタビューで詳しく報告した。これからは、逮捕・送還された脱北難民の最終着地である甑山教化所について詳しく報告したい。そのため、脱北女性の証言だけで特集を構成する予定を変更して、他の罪に問われて収監された人へのインタビューと、解説記事も掲載する。

甑山教化所は、北朝鮮の内部では非常に悪名の高い収容施設だ。しかし国際社会では「管理所」と呼ばれる政治犯収容所や、度々執行される公開処刑の印象が強烈なためか、甑山教化所の過酷な強制労働と劣悪な収容環境の問題が注目を集めることがなかった。脱北難民の二人に加えて、脱北とは別の罪に問われて甑山教化所に収容されていた二人の証言を交えて、この身の毛もよだつような拘禁施設の実態に迫ってみたい。

◆〈インタビュー 1〉Aさん (4)
取材:二〇〇八年九月

甑山教化所に収監され二年近くを過ごしたAさんの証言を以前に続けて紹介する。
これまでは、中国から逮捕・送還され甑山教化所に送られるまで、どのような手続きを踏み、どんな取り扱いを受けるかについてまとめた。今後は甑山教化所がどのように運営され、収監者がどのような処遇を受けるのかについて、Aさんの体験をまとめる。

甑山教化所とは?
Q:甑山教化所とはどんな所ですか?
A:甑山は背後が海(黄海)で、周りは貯水池と広い田畑です。逃げようとしても逃げられません。

Q:垣根とか塀のようなものはあるんですか?
A:(収容施設には塀があるが)地域全体が耕地で農作業する所だから、作業する田畑には塀のようなものはありませんが、甑山地域から出る所に警戒所(検問所)があって出入りが大変厳しいです。外の人も簡単には入って来られません。周りは主に水田ですが、トウモロコシ畑や豚を飼育する施設もあります。

Q:甑山教化所の施設はどの組織の管轄ですか? 保衛部(情報機関)ですか?
A:保安省(警察)の管轄です。保衛部ではありません。

Q:収容者はどれぐらいいるのですか?
A:甑山教化所は大きいですよ。一一の管理課に分かれていて、一つの管理課におよそ五~六〇〇名程度が収容されています。

Q:規模が大きいですね。五〇〇〇名を超えるのではないですか?
A:大きいですよ。七〇〇〇人以上だと聞きました。男と女は別の管理課になります。そして五~六〇人ぐらいが一つの班を作ります。

Q:どんな罪状の人が収容されるんですか?
A:いろいろありますが、中国から送還された越境者以外には、窃盗、詐欺、人身売買それから殺人罪、銅とかの金属商売(中国に密輸するための金属類を取引)した者などがいましたしね。
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