甑山教化所そばの空き地には、相当数の墓碑なき遺体が埋められていると思われる。(写真はイメージです。1997年8月咸鏡北道の山肌を覆う墓地 石丸次郎撮影)

甑山教化所そばの空き地には、相当数の墓碑なき遺体が埋められていると思われる。(写真はイメージです。1997年8月咸鏡北道の山肌を覆う墓地 石丸次郎撮影)

インタビュー:甑山(ジュンサン)教化所から出所した女性 3
聞き手 シム・ウィチョン

獄中死
シム:甑山教化所では中で死ぬ人がいますか?
B:多いなんてもんじゃありません。一つの部屋に大体二、三〇名が収容されますが、朝起きたら五人が死んでいることもありました。

シム:死んだ人たちはどうなりますか?
B:コッドンサン(花の山)に運ぶと皆が言うんだけれど、入った当初、私はコッドンサンが何なのか知らなかったんです。(建物の中で死ぬと)死体を引きずって行ってひとまず便所の脇に置きます。便所に行くたびに鳥肌が立ちますよ......。それから(死んだ人の)所属する管理課の人たちが来てコッドンサンに運んで行きます。

女の管理課には男がいないから、女たちが運んで行ってスコップで地面を掘って、そのままなんの敷物もない状態で横にして埋めてしまうんです。あとには何もない、墓碑もない。罪を償うために入ってきたのに、償わないまま死んだ者は死んでも罪人だ、というわけなんです。

ワイロ・相互監視・銃殺
シム:教化生活も金次第ということがあるんではないですか?
B:わが国では金さえあれば何でもできるでしょう。金があって力のある者たちは、勾留場に入れられてもすぐに出て行きます。たとえ大きい罪を犯したとしても、監獄の飯なんてたいして食べることもなく出ていくんです。

保安員たちも、金のある人間の言うことは聞いてやります。金がすべてだから。教化生になってもお金さえあれば、一年の刑の者が二、三ヶ月ぐらいで出て行きます。力のないかわいそうな庶民だけが背骨が折れるほどしんどい目に遭うんです。普通の庶民は、教化に行くとなれば皆死ぬ覚悟をするもんです。

シム:教化所の中では互いに監視させるそうですね。
B:甑山では、三人ずつが組を作って互いを監視するようになっていて、三人の中で一人でも過ちを犯したり逃走したりしたら、三人ともが独監房に入れられるんです。場合によっては(一人の過ちのせいで)一年の刑期が二年になったり......。

シム:互いに牽制するようになりますね。
B:だから死のうとしても死ぬことできないように(他の二人が監視する)。

シム:教化所から逃げ出そうとする人はいますか?
B:脱走した場合は、容赦なく撃ち殺しますよ。

シム:撃ち殺すのを見たことがありますか。
B:はい、あります。私が入った次の日かな。一八歳ぐらいの若い女の子が逃げようとして撃ち殺されました。教化生でしたが、なんと死体を吊るしておくんですよ! そして、(収監者を)一列に並ばせて、その前を通過させるんです。「お前たちも逃げたらこのようになる」という見せしめですよ。

シム:うーん。死体をぶら下げておいて、その前を歩かせるんですか。
B:さっき言った(相互監視の)三人組の中の脱走者以外の残り二人は、独監房に入れられました。独監房というのは体一つ入るぐらいの部屋で空気穴があるだけで、用を足す時以外は動きもとれずに、目をつぶってずっとしゃがんだまま一週間ないし一〇日間過ごすんです。食事は一匙か二匙だけ。ひどいですよ、その独監房が一番耐え難い。一番野蛮ですよ。さらに刑期も延長ですから。それが怖いので、皆が互いに監視したり、互いに告発したりするから、びくびくします。
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