石丸:治療はしないんですか?
C:あまりにも患者が多いから、一つの病室に患者らを集めて入れます。ご飯も運んであげます。伝染病の場合は、健康な人々と接触できないように隔離します。まったく動けない状態ならば、その場でおしっこや大便を垂れ流して死んで行きますよ。保安員たちは、死ぬんなら罪を償って出所してから死ね、中で死ぬなと言いますね。

石丸:死んでしまったら?
C:死んでしまったら、亡骸を前にして会議をすることがあります。「見ろ、言うことを聞かないから『故意病』にかかって死ぬんだ」と担当保安員が批判します。『故意病』というのは、下痢をするのをわかっていて言うことを聞かず病気になった、つまり自分でわざと病気になったと言うわけです。

それで死んだ場合は、死人を批判し、過ちを討論します。死人に対して〈思想闘争〉をするわけですね。「なぜこいつは死んだのか?」、「この死んだ奴は朝鮮の反逆者で、自分の罪を償えないまま死んでいった、言うことを聞かず『故意病』になった」とか。
一番問題視するのは食べることについてです。

塩を食べ過ぎるな、カエルを食べるな、オタマジャクシを食べるな、とか。田んぼで仕事をしているとオタマジャクシが泳いでいるでしょ、あれは甘くておいしいので、つい仕事をしながらすくって食べる人がいるんですが、あたると熱が出て下痢になるんです。「食べるな」とさんざん注意があるんですが、ところが腹が減ったらそんな話なんて聞きませんよ。なんでも食べて、空腹を満たさなければならないから......。

それで死ぬことがあるから、「故意病」と呼んでいるんです。田植えの季節にたくさんかかります。何かの黒い薬をくれますがあんまり効かない。だいぶ悪くなるまで注射はしてくれませんし、外部の病院にも連れて行ってくれない。

石丸:遺体はどうするんですか?
C:初めは、人が死ぬのを見ると恐ろしかったんですよ。ところがあまりにもたくさん見るようになって、一日に二、三名が死んでいくのを見ることもあって、それが普通になっていきました。死んでも棺もありません。布切れで巻いて埋めに行くんです。最近では布もなくて、死んだ人が使っていた布団に巻きます。それもなくてビニールに巻くだけのこともある。埋めるのは、山間の丘で、コッドンサンと呼ばれています。

石丸:コッドンサン?
C:はい。人を埋める場所をコッドンサンといいます。共同墓地のようなものです。入って間もない頃、監督の警察官に叱られて「お前、コッドンサンに行きたいのか?」と言われた時は、何の意味だかさっぱりわかりませんでした。
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