(2)経済破綻
何度も指摘してきたが、経済はボロボロである。頑迷に改革開放を拒み続けてきた結果、国営工場での生産は八割がストップ、ほとんどの職場で食糧配給も給与も出ていない。

首都平壌や、炭鉱・鉱山、軍需産業地域を除けば、電気は一日数時間しか供給されていない。さらに昨年末のデノミ措置(通貨単位を百分の一に切り下げた)の失敗による混迷が拍車をかけ、一部で餓死者まで発生している。

軍隊にも栄養失調が広がり、警察や保衛部(情報機関)要員の待遇も悪化の一途である。改善の兆しは全く見えていない。

(3)政治
金正日総書記は、北朝鮮国内では「失敗した指導者」というのがコンセンサスになっている。経済を悪化させたからだ。加えて、老齢化と健康悪化で、元気だったこ頃に比べると、執務能力は相当に落ちているのは間違いない。

今、金正恩への世襲後継を急ごうとしているが、内部の取材パートナーたちによると、一般民衆は支持も期待もしていないし、党幹部からも失望の声が出ているという。
何の実績もなく正当性に疑義を持たれている正恩氏が、党と軍の求心力は獲得するのは簡単なことではないだろう。

金総書記にとって最優先なのは金王朝の「国体護持」だ。言い換えると金正恩氏への政権移譲をつつがなく進めることである。
金総書記は父親として、米国との間で安全保障の担保を獲得し、経済を立て直し、絶対的に忠誠を尽くす党と軍を、息子に譲りたいはずだ。

しかし、時間の猶予はあまりない。そして衰退した政権には、事態を短期に好転させる力はない。
北朝鮮が韓国砲撃という無謀に走った内部要因は、弱体化による混乱なのである。
(石丸次郎)

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