第5回 証拠のフロッピーディスクを鑑定する

2011年3月5日(土) エル・大阪2F 文化プラザにて

2011年3月5日(土) エル・大阪2F 文化プラザにて

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(板橋)
鈴木弁護士には、取材のとき、次のように訊かれたことがあります。
「あなたは裁判担当の記者?検察担当の記者?」と。私は検察担当の記者です、と言いました。
すると、鈴木弁護士は、「検察担当の記者が、検察を批判できるんですか」と言いました。非常に重い問いかけだったと思います。
記者クラブに所属する記者、もっと言えば、捜査当局の担当記者は捜査側に立った報道をしていると思われているということを感じました。検察担当記者への不信感を感じました。

わたしたちの気持ちとしては、そんな思いはなく、是々非々でやっています。それは、大阪府警担当の記者などほかの同僚記者も同じだと思います。でも、市民の側、弁護士の側からするとそうは見られてはいないということです。
私は鈴木弁護士に、「検察担当の記者だからこそ今回の改ざんの情報に辿りつけたと思っています。検察担当の記者だから、検察関係者を取材するなかでつかんだ話なんです。検察担当記者が記事にすることに意味があると思います」という話をしました。

また、私が下野新聞にいたときに、知的障害者が強盗容疑で逮捕・起訴されたあとに実は真犯人が見つかっていたという事実を記事にした話も鈴木弁護士にしました。警察や検察はその事実を発表していませんでした。警察担当記者のときに、警察の批判記事を書き続けた経験が私にはありました。
そんな経験から今回も覚悟はありますと伝えました。そうしたら、ようやく「そこまでやる気があるならわかった」と言ってくれたのでした。

鈴木弁護士は、「あなたパクられるかもしれないよ」という話をされました。検察というところは検察自身の不祥事を表に出そうとした人間をかつて逮捕したことがあります。検察の裏金を報道機関などに明らかにしようとした当時の幹部を大阪高検が逮捕した件です。
わたしたちが取材していることが検察にわかってしまえば、証拠改ざんの事実を記事にする前に逮捕されるかもしれない、ということを鈴木弁護士は言っていたのです。

証拠改ざんを取材するにあたって、私の上司の村上や同僚の野上とは、逮捕されるかもしれないということは話をしていました。
逮捕が怖いからと記事を書かなければ、わたしたちがこの問題を隠すことになる。やれるだけのことはやってみようということになっていたので、鈴木弁護士から問われた時は、その覚悟もありますと、即座に答えました。

ようやくその段階になって、フロッピーディスクのデータが「6月8日」になっていることを教えてくれたのです。2010年8月下旬の話です。
ただ、鈴木弁護士には、フロッピーディスク持ち主の元係長の承諾をとって欲しいということを言われました。弁護人としては当然のことです。そういうなかで、元係長に会い、承諾を得ることができました。
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