購入した中国産米を運ぼうとしている女性。(2008年平壌市江東郡 チャン・ジョンギル撮影)

 

長期内部調査 超インフレの発生、その要因を探る 4
整理 石丸次郎/リ・ジンス

◆「グラフ1 コメ・トウモロコシの価格変動」のPDFデータへリンク
◆「グラフ2 対中国元交換レートの変遷」のPDFデータへリンク
◆「表1 グラフ1、2の元になっている価格の一覧」のPDFデータへリンク
◆「グラフ3 グラフ1、2より算出した中国元換算の北朝鮮国内の食糧価格推移」のPDFデータへリンク
◆「表2 参考 他の物価の変遷」のPDFデータへリンク
◆「表3 中国からの食糧輸入の推移」のPDFデータへリンク

解説 超インフレの要因は何か(承前) 石丸次郎
2.米価は人民元基準で見ると大きく上がっていない(承前)
実は、国際社会からの大量のコメ支援がなくなった現在、北朝鮮の市場で流通しているコメの大部分は北朝鮮産だ。また同年度産のコメであれば北朝鮮産の方が中国産より少し高い。

これは中国産の白米が低質の古米中心に輸入されているためだと思われる。「朝鮮産の方が粘り気があっておいしい」とは北朝鮮人が共通して語る感想である。にもかかわらず、中国から輸入されてきたコメの値段が基準となっている現実、つまり市場の価格決定力を持っているのはなぜだろうか?

ここからは仮説である。中国から輸入される食糧は、石炭や鉄鉱石などの輸出の代価、現金決済で輸入されるもの、無償支援の三つに大きくは分けられる。それらは北朝鮮国内で、本来は労働者や官吏などの配給に回されるはずなのだが、実際には相当量が市場に売られていくと思われる。援助以外は「原価」があるので、市場に売るときにはそこに利潤が上乗せされることになる。

一方の国内産のコメは、協同農場と軍や警察などの国の機関が耕作する水田で生産される。これらも本来は配給(そして農民への分配)に供されるはずだが、やはり市場に回っていく分が少なくない。国内産米を市場に流す商売人たちは高値で売りたいから、コストのために下限価格が決まっている中国産米の価格が基準にならざるを得ないのではないか。
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