バス乗り場や休憩所には乗客目当ての物売りが集まってくる。中国の地方都市の光景とそっくりだ。女性は酒や飲料、果物、軽食、スルメなどを売っている。左隅にも車窓を見上げる物売りの姿が見える。(2008年11月黄海南道海州市 シム・ウィチョン撮影)

バス乗り場や休憩所には乗客目当ての物売りが集まってくる。中国の地方都市の光景とそっくりだ。女性は酒や飲料、果物、軽食、スルメなどを売っている。左隅にも車窓を見上げる物売りの姿が見える。(2008年11月黄海南道海州市 シム・ウィチョン撮影)

 

2.市場の力が作った長距離バス網[5]

取材 キム・ドンチョル/リ・ジュン/石丸次郎
情報提供 チェ・ギョンオク
監修 リ・サンボン(脱北者)
整理 リ・ジンス

「サービバス」のシステム(承前)
3. 乗り方
「サービバス」に乗るには車掌からキップを購入しなければならない。以前は切符売り場がありそこで購入するようになっていた。だが売り場の担当が、キップの売り上げをくすねる不正が相次いだため、車掌から直接購入する方式に変わったという。

バスに何人の客を乗せるかについての権限は運転手にある。定員が五〇人のバスに八〇人から一〇〇人まで乗せる場合も少なくなく、こうした場合はなんとか座席を確保しようと、押し合いへし合いの競争になるという。立ち乗り客はいくらか安い運賃で乗ることができる。

また、荷物が多い場合には追加料金となる。荷物の量や路線によって値段は違うが、キム・ドンチョル記者によると、平城--新義州間では三〇〇ウォンほど出すと、荷物用の席を一つ作ってくれたという(これは空いていたためだと思われる)。入りきらない荷物は車体の上部に積む。

「サービバス」は移動が長距離であるため、途中でトイレ休憩があり、休憩場所には飲み物や食べ物を売る売店もある。乗客が休憩時に食事をしたり一杯飲んだりする姿は日本や韓国と変わらないという。また、北朝鮮のバスに多いのが故障だ。主に日本製や中国製の使い古しの車体を利用していることに加え、舗装されていない道が多く、タイヤのパンクやスプリングが折れるなどの故障は日常茶飯事。その都度バスを停めて修理を行うため、そうした場合にはひどく延着する場合もあるという。

ペットボトルに詰めた飲用水を売っている。(2010年6月平安南道平城市 キム・ドンチョル撮影)

ペットボトルに詰めた飲用水を売っている。(2010年6月平安南道平城市 キム・ドンチョル撮影)

長旅を終えた乗客にリヤカーで運んだ洗面用の水を売っている。男性が足を洗っている。(2010年6月平安南道平城市 キム・ドンチョル撮影)

長旅を終えた乗客にリヤカーで運んだ洗面用の水を売っている。男性が足を洗っている。(2010年6月平安南道平城市 キム・ドンチョル撮影)

 

事故も多いようだ。一例として、二〇一一年三月に両江道の恵山市と甲山(カプサン)郡の間で起きた事故を挙げておこう。二〇〇七年に恵山市近郊に竣工した三水(サムス)発電所により、ウンソン川の水量が増えてダム湖となったため、「サービバス」は以前より一五キロほど長い距離を走らなければならなくなった。

だが、ガソリンを節約するために近道をしようと、凍った川の上を走っていたところ、氷が割れてバスが川中に水没、乗員乗客七〇名ほどが死亡した。恵山市に住む取材協力者、チェ・ギョンオク氏からの一報である。チェ氏によると恵山市周辺では、このように氷結した川面を走っているバスが、氷が割れて水没する事故が毎年起きており、五〇人前後が死亡しているという。
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