岐阜県瑞浪市のフェロシルトで造成された現場での市民団体による測定のようす2005年3月撮影:井部正之

 

放射線測定をしてもらったところ、フェロシルトが野積みされたり埋められた場所では、周辺のふつうの場所に比べ、2~4倍の放射線(主にガンマ線)が検出された。
「放射線量に比例してがんや白血病になる確率は上がりますから、仮にここで生活すればそうした危険が2~4倍程度増えることになります。非常に薄いながらも覆土してあるのでこの程度なのでしょうが、覆土がなかったらもう少し高い数値になったはずです」と測定した四日市大学非常勤講師の河田昌東さんは話す。

◆無視される内部被曝の危険
4月に石原産業を取材すると、「我々も現場に行って測定しましたが、そんな数値がでたことは一度もない」と反論した。それどころか、「意図的に高い数値が出るようにしたのではないか」と疑う始末だった。
調査では複数の測定器を使って、それでも同様の結果が得られていたし、石原産業と同じ機器を使用した瀬戸市による同じ場所の調査でも通常の2~3倍の放射線が計測されており、意図的な操作や測定ミスは考えられない。むしろ石原産業の測定に問題があるか、回答に虚偽があったと思われた。
改めてそうした事実を指摘しても同社は、「測定の仕方が悪かったのではないか」と抗弁した。

岐阜県瑞浪市のフェロシルトでの測定2005年3月撮影:井部正之

 

フェロシルトの問題はこれだけではないと河田さんはいう。
「行政はガンマ線のことばかり言いますが、実際にはアルファ線による内部被曝のほうが怖いんです。ウランやトリウムを含んだ粉じんを吸ってしまうと周辺のごく限られた細胞がアルファ線によって集中的に被曝する。同じ線量ならアルファ線はガンマ線に比べて20倍危険だといわれています」

フェロシルトには通常よりも多いウランやトリウムがふくまれていることが明らかになっており、野積みされている状況では粉じんの吸入による内部被曝は大きな問題といえる。しかも植物などを通じて体内に取り込まれることもあるという。
それでも石原産業は「安全」を繰り返した。実際に通常よりも高い放射線を測定した瀬戸市も「問題が生ずるものでない」と言いだす始末だった。愛知県なども「ただちに影響が出るとレベルではない」と冷淡だった。マスコミも放射能汚染についてほとんど報じることはなかった。

しかしすでに放射性物質の流出は始まっていた。いくつもの「リサイクル」現場から、雨の日にフェロシルトが溶けた赤茶色の水が下流の川などに流れ出しているのが頻繁に確認され、「川が真っ赤になった」との報告も少なくない。
「その川の水を水田や畑に使っているところもあるんです。『これで稲を作っていいのだろうか』と心配されるかたもいます。

行政は放射線量は低いから覆土すればいいといっているけど、埋めればいいってものではない。埋めると表面はいいけど、何十年後に地下水に影響がでないか心配です」と、「放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜」代表の兼松秀代さんは将来の汚染を懸念する。
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