◆放射能汚染ゴミが日常生活に
「クリアランスレベル以下なら大丈夫」──。
福島第一原発の事故によって日本列島のいたるところに放射能がばらまかれた結果、下水道施設やゴミ処理施設は軒並み"放射性ゴミの処理施設"となってしまった。当然ながらリサイクルも放射能の影響を受ける。それが大きな社会問題となりつつあるが、国はこのような説明をするようになった。だが、それは本当だろうか。
原発解体で発生する廃棄物をリサイクルする「クリアランス制度」が導入される直前の2005年11月に同制度の問題について言及した記事を改めて紹介する。なお、文中の年月や関係者の肩書きなどは発表当時のままである。
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2003年に運転停止した「ふげん」2005年6月撮影:井部正之

 

茨城県那珂郡東海村――。1999年のJCO臨界事故で全国にその名を知られるようになったこの村は、東西に走る基幹道路に「原電通り」「動燃通り」「原研通り」と、村内に立地する原子力関連施設にちなんだ名前をつけるほどの〝原子力村〟である。

この原電通りを東に行った海際に日本原子力発電(原電)の原発施設がある。入口のすぐ左手にあるPR施設の駐車場から見える、古びた建物が商業用原発第一号の東海原発である。すでに98年に運転を終了し、2001年から解体が始まっている。
10月中旬に東海村の原電を訪れ、PR施設で聞いてみると、隣接するタービン建屋内の設備は解体され撤去ずみという。計画通りであれば、すでに1万トンあまりの解体廃棄物が敷地内で保管中のはずである。
愛想のよい案内員の説明を聞きながら、敷地内のどこでどのように放射性ゴミが管理されているのだろうかと考えていたときだ。

「そこに展示してあるのが解体して撤去したタービンです」
そういわれて血の気が引いた。
一般の見学者や子どもが訪れる場所に、放射性物質をふくんだ蒸気に長いあいだ直接さらされ、汚染されたタービンを展示しているのか――。黒光りする大きなタービンを見ながら背筋が冷たくなる思いだった。

よく聞いてみると、東海原発ではタービン設備は原子炉とはべつの系列になっているため、タービンに触れる蒸気に放射性物質が含まれることはなく、汚染はないとのことだった。放射線汚染されたタービンを展示しているというのが自分の早とちりとわかって少し安堵したが、〝単なる勘違い〟と笑い飛ばすことはできなかった。
じつは身の回りにあるさまざまな〝モノ〟からの放射線被曝を本気で心配しなくてはならない時代になりつつあるのだ。
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