(参考写真)咸鏡北道会寧(フェリョン)市。間を流れる川は豆満江。2010年6月中国側より撮影(アジアプレス)


◆「ロケット発射」、4月15日行事を前に情報流出警戒か

(李鎮洙)

朝中国境の川、豆満江上流地域一帯で中国キャリアの携帯電話が全くつながらなくなっていることが分かった。アジアプレス取材班が3月下旬、現地の中国側を直接訪れて確認した。中国キャリアの携帯電話が使用できなくなっているのは、北朝鮮側から発せられる「妨害電波」のためだ。

不通になっているのは、豆満江流域にある朝中間の七つの税関のうち、最も上流地域にある崇善鎮から、一つ下った南坪鎮までを含む30キロほどの区間。中国キャリアの携帯電話で発信すると「事情により電話をおつなぎできない」旨のアナウンスが中国語と英語で流れ、すぐに通信が終了してしまう。
不通の具合がより広範囲に及んだのは南坪鎮。崇善鎮方面では車で3分ほど上流に向かえば通話がすぐに再開できたが、南坪鎮の周辺ではまったく通話ができない状態だった。

◆止まらない「非社会主義行為」
南坪鎮の向かい側の咸鏡北道茂山(ムサン)郡は、以前より北朝鮮当局の言う「非社会主義行為」がもっとも盛んな地域。「非社会主義行為」とは、密輸・麻薬取引、人身売買、中国への越境、韓国ドラマをはじめとする海外文化の流入や、逆に北朝鮮の内部情報の国外流出などを指す。
こういった行為を「支えてきた」のが中国キャリアの携帯電話だ。北朝鮮側に基地局は無いものの、国境から北朝鮮内数キロ程度の間では通話が可能なため、2000年ころから中国と北朝鮮国内をつなぐ連絡手段として重宝されてきた。

北朝鮮当局はこれまで、車載した移動型の電波探知機を使って電話使用者を突き止める方法を採っていた。だが、数千人に上ると思われる携帯電話の不法使用を取り締まるのは容易ではなかったため、電波自体を送受信できなくする強硬手段に出たものと思われる。
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