庶民の食卓。トウモロコシご飯の他に、おかずは野菜を味噌であえたもの(右)と、塩(左)ぐらいだという。2011年3月 両江道恵山(ヘサン)市 撮影 崔敬玉(チェ・ギョンオク)(アジアプレス)

庶民の食卓。トウモロコシご飯の他に、おかずは野菜を味噌であえたもの(右)と、塩(左)ぐらいだという。2011年3月 両江道恵山(ヘサン)市 撮影 崔敬玉(チェ・ギョンオク)(アジアプレス)

 

◆「100周年だから100種類出ると噂されていたのに」

(石丸次郎)

4月15日の金日成主席生誕100年を記念する行事が、北朝鮮全域で開催されたが、それに合わせて国から支給された「特別配給」の中身が貧弱だとの不満の声が、現地では上がっている。
北朝鮮内部事情を伝える雑誌「リムジンガン」の取材協力者で、北部咸鏡北道に住む女性は、15日夕刻アジアプレスとの電話で「特別配給」の内容について伝えてきた。

「私の地域で出た『特別配給』は、一世帯あたりトウモロコシ、白米、大豆合わせて15日分の食糧と、ビール一本、食用油は一人あたり250グラム、味噌、ビニール袋入り焼酎一袋、飴、食品以外では傘、男物のランニングシャツなど。子供のいる家は制服も出ました。まだ受け取っていないけれど毛布もくれるということです」

金日成氏、金正日氏の誕生日は「民族最大の祝日」と位置づけられ、毎年国民へのプレゼントである「特別配給」が実施されてきた。しかし、90年以降の深刻な経済難の中で、その内容は悪くなる一方だった。地域差があるものの、例えば平壌南道では、昨年の金正日氏の誕生日には800グラム程度のお菓子セットと焼酎一本が配られただけだった。

それに比べると、今年の「特別配給」は格段に種類も量も多い。しかし、情報提供してくれた女性は、人々は失望しているとして次のように語った。
「強盛大国になるから、今年の4月15日の特別配給はたくさんもらえるよと人民班長も言っていたし、(金日成生誕)100周年だから100種類の配給が出ると噂されていました。(もらった配給は)想像していたものとかけ離れていたので、がっかりでしたね」

今年2012年は、「強盛国家の大門を開く年」だと、北朝鮮当局は数年前から大宣伝を繰り返してきた。ところが実際の暮らしは、この数年だけを見ても悪化の一途をたどっており、北朝鮮国民の大半は強盛国家が実現することなど不可能なことを知っている。しかし今年は、金日成生誕100周年にあたる特別な年なので、「特別配給」も大盤振る舞いをするという噂が広く流れていた。その分、民衆の失望は大きかったようである。

この「リムジンガン」の取材協力者の女性は「ミサイル発射」の失敗についても、次のように言及した。
「(発射につぎ込んだ)お金があれば、庶民の暮らしも少しは楽になったんじゃないかとか、もったいないという話が人々の口から少しずつ聞こえています」
(石丸次郎)