格段に厳しい統制

Q:平壌市内で政府に反対するビラが撒かれたり落書きが書かれたりという事件を見聞きしたことはないですか?

ク:私は聞いたことありませんね。去る七月二四日の選挙(地方人民代議員選挙)の時に、平安南道の安州(アンジュ)の投票場で落書き事件があったそ うです。平壌ではそういう事件があったとしても、周辺の住民がすぐに保安署や保衛部に知らせたはずです。そして、一切(付近を)遮断するんです。すでに見 てしまった人に対しては、絶対に口外するなときつくクギを刺します。しゃべってしまうと秘密を流布した罪で政治犯になるから、噂もなかなか広がりようがな いんです。地方ではビラや落書きの事件があっても、好き勝手に話して噂が広がりますが、平壌では難しい。下手に喋るとそれだけで監獄行き、平壌からも無条 件追放だから、皆気をつけています。

これは実際にあった話ですが、地下鉄の中で女子大生二人が「強盛大国」について話をしていて、一人が「まったく、この状態で来年、強盛大国になる の?」と言ったところ、もう一人が「あんた、まだそんなこと信じてるの? 強盛大国になんてなれる訳ないでしょ」と言ったんだそうです。次の駅で降りたら 側にいて話を聞いていた人が、二人の女子大生を連行していったそうです。その後「強盛大国になれる訳ない」と言った方の学生は帰って来ることができなかっ たそうです。

Q:住民が平壌から追放されることは多いんですか?

ク:ちょっとしたことでも追放になるケースがままあります。何か罪を犯すとすぐ追放です。経済犯であれ、政治犯であれすべて追放。地方よりずっと厳 しいですよ。日頃から皆言動には十分注意するんです。だから追放が怖いので地方よりは犯罪も少ないんです。住民への監視も厳しいし。平壌から地方に追放さ れるというのは、人生がひっくり返るような重大事なんですよ(身分が転落するという意)。

*   *   *

特別待遇を受ける首都であっても、普通の庶民の多くはその日暮らし。いつも、どこかで監視の目が光っているようで、空気も重たい。街を浮浪して「物乞いする自由」も平壌にはなさそうである。

なかなか実感はわかないのだが、ク・グァンホ記者の言葉から伝わってくるのは、平壌に住むというのも、本当になかなか大変そうだ、ということである。

(内容は二〇一一年一一月までの情報)
(この項、終わり)

注1 二〇一〇年、平壌市に属していた祥原(サンウォン)郡、中和(チュンファ)郡、江南(カンナム)郡、そして勝湖(スンホ)区域 の四地域が、突然平壌市から切り離され黄海北道に編入された。平壌市民でなくなった人の数は三〇万人程度だと思われる。一一年になり江南郡が平壌市に復帰 したという説もあるが詳細は不明だ。

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